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永谷正樹のなごやめし生活

「なごやめし」について書き綴ります。

「名古屋駅のホームで食べるきしめんがいちばん旨い」説にもの申す!

雑記

'05年の愛知万博をきっかけに、全国的に認知された「なごやめし」。10年以上経った今でもそれを目当てに県外から名古屋へ訪れる人が多い。しかし、その人気をよそに、ずっと日の目を見なかった「なごやめし」がある。それがきしめんだ。

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地元の人に美味しいきしめんの店を聞いても「名古屋駅のホームで食べるきしめんがいちばん旨い」と言われる。それは河村たかし名古屋市長の口からも聞いたことがあるほど地元では通説になっている。かく言う私もひと昔前まではそう答えてきた。

しかし、今では「それは違う」と断言できる。駅のきしめんのポイントは、駅というシチュエーション。旅情を感じささせる場所で食べる郷土料理をより美味しくさせるのだ。駅のきしめんは実際に旨い。しかし、「いちばん旨い」というのは言いすぎだと思うのだ。

名古屋駅のホームで食べるきしめんがいちばん旨い」説が誕生した背景には、きしめん専門店の少なさにある。そもそも名古屋市内どころか愛知県内を見渡してもきしめんの専門店が少なく、うどんやそばも出す麺類食堂がきしめんも提供しているのが大半だ。早い話が名古屋の人は駅以外できしめんを食べていないのだ。かつての私もそうだった。自分の無知さ加減をごまかすための、苦し紛れのものであったことをここに懺悔したい。

きしめん人気の下火について、ある麺類食堂の店主は、

「万博の頃、きしめんよりも味噌煮込みを推したからなぁ。味噌煮込みの方が儲かるし、作るのもラクだし。オレたちにも責任はあると思う」と語った。言い換えれば、きしめんは作るのが面倒なわりに儲からないということになる。

きしめんの特徴は、何といっても平打ち麺であることだろう。日本農林規格JAS)によると、乾麺は幅4.5mm厚さ2mm未満の帯状のものと規定されているが、実際は幅7~8mm、厚さ1mmの店が多いようだ。なかには4cm以上もある幅広きしめんを出す店もある。

着目すべきは厚さ。向こう側が透けるほどの厚みでありながら、箸で持ち上げても切れないのはなぜか。それは麺を打つ際に使う塩水の濃度が関係している。塩分の濃度が高ければ高いほど切れにくくなる。それは麺を茹でるときに生地から塩分が抜けて麺がギュッと締まるためだ。そして讃岐うどんの「コシ」とは少し違う、グミのような独特の弾力が生まれる。

ちなみに「コシ」があるといわれる讃岐うどんの塩分濃度は9~10%。夏場でも15%未満。一方、きしめんは15%前後。夏場は20%を超えることもあるというから、いかにきしめんの塩分濃度が高いのかがわかるだろう。

塩分濃度の高い生地を打つのは、かなりの技術が要る。私も生地を触らせてもらったことがあるが、まるでタイヤのゴムのように固くて、押しても凹まないのだ。これを平たく伸ばす作業を毎日行っている職人さんをあらためて尊敬した。しかも、きしめんだけではなく、うどんや味噌煮込み用のうどん(塩は使わない)、そば、夏場はひやむぎも打つ名古屋の麺類食堂は世界遺産に登録されてもおかしくはないと思う。

駅のホームのきしめん店が使っているのは冷凍麺。ひと昔前に比べると、たしかに冷凍麺のレベルはかなり高くなった。しかし、材料にもこだわり、手間暇かけた自家製麺の美味しさとはまったく違うのだ。

名古屋駅のホームで食べるきしめんがいちばん旨い」と、ツウぶった名古屋人が周りにいたら、一緒に昔ながらの麺類食堂に足を運んでほしい。そして、本物の味を知らせていただきたいと切に願う。