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永谷正樹のなごやめし生活

「なごやめし」について書き綴ります。

名古屋でかつ丼といえば…・その3(最終回)

皆様はどこでかつ丼を食べているのだろうか。かつ丼が食べられるのは、味噌かつ丼を紹介したときにも触れた、とんかつ専門店がまず一つ。ほかにも思い当たる店はあるだろうか。ファミレス?冗談はよし子さんである。旨いかつ丼を食べたいと思ったら、麺類食堂に限る。きしめん味噌煮込みうどんを出す、あの麺類食堂だ。

かつ丼の味の決め手となるのは丼つゆである。丼つゆときしめんのつゆは濃度の違いこそあれ、ダシやたまり醤油をはじめとする調味料は共通である。だから麺類食堂で食べるかつ丼は旨いのであり、卵でとじたタイプが一般的なのだ。もちろん、麺類食堂のなかには味噌かつ丼が名物という店もあると思うので、すべてがそうだとはいえないが。

丼つゆはきしめんのつゆと同様に、ムロアジやサバ節、ソウダカツオでとったダシがベース。それにたまり醤油やみりん、酒、ザラメなどをくわえて仕込む。見た目は関東のかつ丼と何ら変わりはないが、中身はまったく別物と言っても過言ではないのだ。それは丼つゆを使う親子丼や玉子丼も然り。

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今日、それを再確認するために錦3丁目の『総本家えびすや本店』へ行ってきた。これが「かつ丼」である。卵でとじてあると思いきや、揚げたてのとんかつの上に丼つゆで溶き卵とネギを煮込んでスクランブルエッグ状にしたものがかけられている。そのため、サクサクの衣に閉じ込められた肉の旨みや脂の甘さが堪能できた。名古屋らしいダシが香る丼つゆを吸いまくったフワフワの卵を絡めて食べるとさらに美味しく、イッキに平らげてしまった。

実はこのタイプのかつ丼は名古屋の麺類食堂でよく見かける。別の麺類食堂の店主から、こんな話を聞いた。

「ウチの場合、仕入れた豚肉がやわらかくて状態が良いときは、スクランブルエッグ型。逆にあまり状態がよくないときは、揚げる時間を若干短くして、軽く煮込んで卵でとじて火を通します。常時スクランブルエッグ型で出している店はそれだけ豚肉の質に自信があるということですよ」

その昔、雑誌のリサーチでかつ丼を2週間にわたってほぼ毎日食べまくったことがあった。そこでわかったのは、かつ丼の美味しさはとんかつの厚みではないということ。テレビでかつ丼を食レポする際に、とんかつの断面を見せて「ご覧ください!この分厚さ!」とコメントするレポーターが実に多い。たしかに薄っぺらいよりは分厚い方がお得感があるし、絵にもなる。しかし、かつ丼として旨いかどうかは甚だ疑問である。

かつ丼に限らず、丼ものの醍醐味は具材とご飯の一体感である。厚すぎるとんかつからは生まれないのだ。リサーチで食べまくったのは、有名なとんかつ店が中心だったこともあり、どの店も定食に使うとんかつをそのままご飯にのせていた。丼ものなのにとんかつとご飯を一緒にかき込んで食べることができなかった。仕方がないので、味噌なり溶き卵なりで味付けされたとんかつをおかずにご飯を食べた。これでは定食と何ら変わらない(笑)。

だからといって、薄すぎるのもいかがなものかと。食べ歩くなかで私はかつ丼におけるとんかつの肉の厚みの黄金律をはじき出した。それは6mmないし7mmである。この厚みがご飯との一体感を生み出すのだ。思えば、それを気づかせてくれたのも、ある麺類食堂だった。そこのかつ丼はとんかつや卵のとろみ加減、丼つゆの味付け、ご飯の炊き具合とどれをとっても完璧だった。ふと、かつ丼が食べたくなると、車を走らせた。しかし、店主亡くなった後、ずっと店は閉まったまま。店主の息子さんが若大将として頑張っていたのだが…。

長々と、かつ丼について3回にわたって書いてしまった。たかがかつ丼。されどかつ丼。実に奥が深いのである。県外の方で名古屋へ来られることがあったら、味噌かつ丼も美味しいが、麺類食堂のかつ丼を是非食べていただきたい。