永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「しるこサンド」は名古屋のソウル菓子だっ!

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しるこサンド」、というお菓子をご存じだろうか?おそらく、名古屋で知らない人はいないだろう。まさに名古屋のソウル菓子ともいうべき存在であるが、知らない人のために少しだけ解説しよう。

しるこサンド」の製造元は、愛知県小牧市に本社がある松永製菓(株)。昭和13年の創業で、キャラメルが主力商品だった。昭和31年にはビスケットの製造を開始したものの、看板商品と呼べるものがなかった。そこで、洋菓子であるビスケットに和の要素をくわえられないかと考えた。それが地元で圧倒的に支持される「あんこ」だった。

「当時からクリームをサンドしたビスケットを商品化していましたが、それと差別化を図るためにビスケットの生地とあんこを焼き上げる前にサンドするという、独自の方法を試みました。ところが、生地とあんこが剥がれてしまうんです。試行錯誤を繰り返した結果、構想から1年後の昭和41年に『しるこサンド』が誕生しました。物珍しさもあって、瞬く間にヒット商品となりました」と、松永製菓(株)広報担当の藤田大輔さん。

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ビスケットにサンドしているのは、北海道産のあずきとリンゴジャム、はちみつなどを練ったあん。粒あんではなく、こしあんをつかっているため商品名に「おしるこサンド」も候補に挙がったが、語呂のよさから「しるこサンド」と名付けられた。

味の決め手は、ほのかな塩気がきいたビスケットと甘~いあんことのバランス。食べはじめると、手が止まらなくなるのだ。味付けにも相当なこだわりがあり、1枚食べただけではおしるこの味がわからないように作ってある。3枚くらい食べた頃にじんわりと甘さが広がるのだ。最初の1枚目からいきなり甘くては、2枚、3枚と手が伸びないために、あえて甘さを抑えているのである。この緻密な計算こそ、「しるこサンド」が半生記もの間ずっと愛されている秘密なのだ。

しるこサンド」は、全国のスーパーのほかダイソーやセリアなどの100円ショップで購入できるが、地元の愛知県小牧市には松永製菓(株)の直営店もある。それが'14年2月、小牧国際ボウル内にオープンしたしるこサンド専門店『しるこサンドの森 あん・びすきゅい』だ。

店内奥にはカフェスペースも完備。「しるこサンド」をはじめとするビスケットが食べ放題の「ビスケットバイキング」を実施している。ビスケットの内容は随時入れ替わり、常時10種類以上が並ぶ。ビスケットだけでは口の中がパサパサになってしまうと思いきや、コーヒーやソフトドリンクも飲み放題。これはおトクだ!

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また、定番の「しるこサンド」や個別包装の「スターしるこサンド」、クラッカータイプの「しるこサンドクラッカー」などが揃うほか、ここでしか買えないレアな商品もある。それが半生タイプの「生しるこサンド」である。

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「この商品のために専門店をオープンさせたと言っても過言ではありません。『生しるこサンド』の構想は10年ほど前からありました。当時、生キャラメルや生カステラが流行っていまして、何とかそのブームに乗りたいと。生地にはしるこサンドとほぼ同じ材料を使っていますが、納得のいく味や食感を生み出すまでに時間がかかりました。商品化のメドが立ったのは3年前のことです」(藤田さん)

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実際に食べてみたところ、しっとり食感のビスケット生地のほのかな塩味とあんこを練り込んだ口どけのよいクリームの甘さが絶妙にマッチしている。たしかに「しるこサンド」のDNAを受け継いでいる。と、同時に1ランク上の高級感溢れる味を実現させていると思った。「生しるこサンド」の生地やクリームは工場のラインで製造しているが、クリームを絞ったり、生地にサンドしたりするのはすべて手作業。そのためオープン当初は生産が追いつかず、社員総出で夜なべして作ったこともあったという。

「生しるこサンド」の評判を聞きつけた有名百貨店などから「ウチで売りたい」とのオファーが相次いでいるそうだが、賞味期限が短いということですべて断っているという。食べられるのは全国でもここだけだが、わざわざ足を運ぶ価値はある。