永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「海老おろしきしめん」はきしめんの最高峰だ!

丼ものの最高峰って何だろう。ここ何年かで流行ってるローストビーフ丼?それともステーキ丼?いや、マグロ丼?海鮮丼?それとも鰻丼か?では、きしめんの最高峰は何か。私は「海老おろしきしめん」だと思う。その名の通り、海老天と大根おろしをのせたきしめんである。特に夏場はこれが無性に食べたくなる。値段を見てガマンすることがほとんどだが。大半の店は温・冷の両方を用意していていて、一年を通じて楽しめる。

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先日、港区方面へ取材へ行った際に、旨いと評判の『高砂』へ行った。初めて訪れる店は「かけ」と決めている私だったが、なかなか港区に来る機会もないと思ったら、どうしても食べたくなった。で、温かい「海老おろしきしめん」(写真)を注文することに。

大きな海老天とたっぷりの大根おろしがどーんとのっている「海老おろしきしめん」もイイけど、ここのは海老天だけではなく、玉ネギやカボチャ、大葉、海苔の天ぷらもどっさりで何だかむちゃくちゃ得をした気分。しかも、どの天ぷらも絶妙な火加減で揚げてあり、野菜は甘みが見事に引き出されていた。圧巻だったのは海老。プリプリの食感とともにじんわりと甘さが広がるのである。天ぷらの専門店と遜色のない完成度に大満足だった。

この天ぷらに負けていないのが、麺。もっちりとした弾力があり、箸で持ち上げると、ゴムのようにビヨンと伸びて箸が引き戻されるほど。濃厚なつゆが適度に染みた麺の旨いこと!もう、思い出しただけでまた食べたくなってきた。私が食事していたとき、店のご主人が店内奥にある工房で麺を切っていた。トントントンとテンポ良く響く包丁の音がとても心地良い。ただでさえ旨いきしめんが余計に旨くなった。

食べている途中で今さらながら気が付いたことがあった。前にも書いたように、名古屋の麺類食堂では、天ぷらや玉子とじなどの種物は「白つゆ」になる。しかし、「海老おろしきしめん」は「赤つゆ」だった。それも「ざるきしめん」に使うような濃厚なつゆを温めてあったのだ。いや、断言はできないが、私はそう感じた。

今までに私が食べた「海老おろしきしめん」はどうだったのか。パソコンに保存してある写真を見返すと、夏に食べたくなるメニューだからなのか、冷たい「海老おろしきしめん」が圧倒的に多かった。温かいものは1つだけ見つかった。

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それは名東区にある『鈴家』。ここもまた地元ではかなりの人気店だが、「海老おろしきしめん」がこれ。ここも海老天以外にもナスや大葉の天ぷらが入る。あと、ホウレン草も。着目すべきは、つゆだ。ご覧の通り、「かけ」のように、丼になみなみと注がれている。天ぷらのサクサク感が失われてしまうものの、染み出した油がつゆを美味しくさせる。大根おろしもたっぷり入っているのでさっぱりと食べられた。「海老おろしきしめん」に「赤つゆ」を使うのは、大根おろしとの相性を考えてのことだと私は推測するが、いかがだろう?