永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ガテン系御用達の(?)なごやめし、皿台湾

昼に台湾まぜそばを食べると、夜に仕事から帰ってきた女房がしかめっ面で「お昼、ナニを食べたの!?」と必ず言う。どうやらニンニク臭いらしい。注文時に「ニンニク抜きで」と告げても台湾ミンチに入っているのだろう。そのため、女性は敬遠するかというとそうではない。

店へ行くと、女性のグループもいるし、女性のお一人様も見たことがある。私は女房を一度だけ『らーめん まぜそば てっぺん』へ連れて行ったことがあり、女房は「これは好きかも♡」と言っていた。台湾ラーメンも『味仙』などの有名店では女性客を見かける。ニンニクのパンチがきいたピリ辛味は性別を問わず人気なのだ。

余談だが、昔はあんかけスパの店はおっさんだらけだった。今は男女比が半々か日によっては女性の方が多いときすらあるという。この状況にいちばん驚いていたのは、何を隠そう、お店の人だった(笑)。

これは完全に私の偏見だが、台湾ラーメンは現場で汗を流すガテン系の男たちに似合う。昼に台湾ラーメンをかっ喰らい、午後からの仕事のためにスタミナをチャージするのだ。それを思い知らされた店が中川区八剱町の『人生餃子』だった。ここは以前に紹介した台湾ラーメンの有名店『江楽』で修業した店主が'07年に開店させた。名店仕込みの台湾ラーメンが人気なのは言うまでもないが、ここの看板メニューは汁無しの台湾ラーメン。とはいっても、台湾まぜそばではない。

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その名も「皿台湾」。ご覧の通り、茹で上げた麺の上に炒めたモヤシやニラ、ミンチなど台湾ラーメンの具材がのせてある。もう、このビジュアルだけでヤラレてしまう人も多いのではないだろうか。

肝心な味だが、シャキシャキとしたモヤシの食感とパンチのきいたニンニクの風味、醤油ダレの香ばしさが後を引く。麺は焼きそば用ではななく、台湾ラーメンと同じものを使用。ややかために茹でてあり、具材とともに食べたときの食感が絶妙。ピリ辛の味付けなので、ご飯の上にのせて食べたくなるほど白メシとの相性は抜群だが、夏場はビールを片手に楽しみたい。

このメニュー、もともとは店の賄いだったそうで、常連客から人気が広がった。その勢いは凄まじく、寿がきや食品から商品化もされていて、私も何度か買って家で作ったことがある。かなりリアルに再現されているものの、やはり店で食べた方が旨い。まぁ、実店舗と比較されるのがこのテのチルド食品の宿命でもあるのだが。

私が食べに行ったとき、店内は全員男性だった。その多くは頭にタオルを巻いた作業服姿のガテン系。皆、汗だくになりながら一心不乱に皿台湾や台湾ラーメンをすすっていた。それがやたらと「絵」になっていたのである。

台湾まぜそばが女性に支持される理由として、味以外にそのビジュアルも挙げられる。丼の真ん中に盛られた台湾ミンチの上にちょこんと卵の黄身がのり、ネギやニラ、海苔などが美しく盛り付けられていて、思わず、スマホで写真が撮りたくなる。で、インスタなどSNSにアップする。それが台湾まぜそばなのだ。

一方、皿台湾はどうか。茹で上げた麺に強火でチャチャッと炒めた具材がどさっと盛られているだけ。無骨なのだ。目の前に運ばれたとき、スマホで写真を撮るよりも一刻も早く胃袋に沈めたいという衝動に駆られる。無骨ながらもダイレクトに食べたいという欲望に訴えかけるのだ。これを男メシと言わずして何と言おう。