永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

名古屋でかつ丼といえば……・その4

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検索サイトのGoogleYahoo!からこのブログを訪れている方も多いと思う。ブログ管理ページのアクセス解析を見ると、私のブログでもっとも検索されているのが、2017年1月14日の記事「名古屋でかつ丼といえば…・その3(最終回)」。

nagoya-meshi.hateblo.jp

 紹介したのは、麺類食堂のかつ丼。一見、ごくフツーのかつ丼のようだが、まったく違う。揚げたとんかつをご飯の上にのせて、その上から丼つゆで煮込んだ卵がのせてあるのだ。とんかつを煮込んでいないので、衣のサクサク感を楽しめるのが、麺類食堂のかつ丼の特徴だ。

最近では、東京でもこのタイプのかつ丼を出す店が出てきたそうで、「載せかつ丼」と呼ばれて注目を集めているらしい。名古屋では昔からこのスタイルなのに、何を今さら(笑)。

写真は、名古屋市東区赤塚町の『森田屋』の「かつ丼」(880円)。なぜ、かつを煮込まないのかはいろいろな説があるらしいが、店主の玉津亮さんが一つの説を教えてくれた。

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「かつてウチもやっていた出前に大きく関係してるんです。例えば、かつ丼5人前の注文が入ったとします。底の浅い丼鍋でとんかつを1人前ずつ煮込んでいては時間がかかります。そこで人数分の卵だけを丼つゆで煮込めば、鍋一つで済むわけです」と、玉津さん。

ここまで聞くと、作る側の事情のように思えるが、実はそうではない。サクサクの衣が楽しめるし、注文先へ届けられる頃には卵が吸った丼つゆがご飯に染みわたるのである。

『森田屋』の「かつ丼」は、味に甘みがある信州産SPF豚を使用。ラードで揚げているので、衣が何とも香ばしい。甘めに味付けした丼つゆが染みたフワフワの卵とよく合うので、思いきりご飯をかき込みたくなる。

名古屋的合理主義から生まれた名古屋の麺類食堂のかつ丼は、ひと味もふた味も違うのである。