永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

写真も、料理も、人のマネから。

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写真が上手くなりたいのなら、人の撮った写真のマネをする。これは基本中の基本であり、天才写真家・アラーキーもそう言っていた。

そんなの、パクリではないのか?と思うだろう。しかし、写真とは一瞬を切り取る作業である。ゆえに、被写体やシチュエーションも違えば、使うカメラやレンズ、照明機材も違う。マネをしたからといっても、絶対に人と同じ写真は撮れないのだ。

人のマネからスタートして、そこから自分なりの味付けをしていく。それは料理も同じこと。

「この秘伝のタレのレシピは門外不出。誰にも教えることはできない」という店ほど実は大したことはない。味に自信がある店ほど、細部にわたってレシピを教えてくれる。それは、いくらマネをしても、まったく同じ味のものはできないことをその店の店主はちゃんとわかっているからにほかならない。

また、先代から二代目が店を継いだら味が落ちたとか、その逆で美味しくなったという話もよく耳にする。同じ食材を同じ厨房で同じ調理器具で作っても同じ味にはならないのだ。

すべてグラム数などの数値を計測して、すべて機械で調理したら話は別。人の手で作るというのは、うまくいかないこともある。だから面白いし、深い。味を追求するほどに旨い料理で人を喜ばせることが夢となり、生き甲斐になる。

写真も、料理も、先人たちが築き上げた技術の積み重ねがあって、今日がある。昨日も書いたが、そこに作り手自身の喜びや感動、失敗や挫折といった生きざまがプラスされて、オリジナルの作品に仕上がっていくのである。そう考えると、私が抱えている悩みなんてものは「屁」みたいなものだ。

近い将来、AI(人工知能)の発達によって、消えていく職業もあるといわれている。しかし、人に感動を与える料理を作る料理人や人の心に響く一枚を撮る写真家は絶対になくならないと信じている。

写真はご存じ、福田ちづるさん。雰囲気のよい、レトロな喫茶店でアラーキー風に撮ってみた(笑)。