永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

70年、という歴史の重み。

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上の写真は、名古屋・伏見『島正』の「どて焼き」である。大根やこんにゃく、玉子を八丁味噌で煮込んだ名古屋めしだ。

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「味噌おでん」という呼び名の方が一般的かもしれない。もともと鉄板の上に八丁味噌で「土手」を作って中に水を入れ、焦がしながら煮込むことからその名が付けられた。

地元以外の方は辛そうに見えるかもしれない。でも、心配ご無用。八丁味噌ならではのコクと具材から染み出した旨みが相まって、メチャクチャ旨いのだ。名古屋には「味噌おでん」を食べさせてくれる店が沢山あるが、私はここがナンバーワンだと思っている。

『島正』へ取材に行ったのは、私がフードライターになったばかりの頃。以来、幾度となくお世話になった。

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とくに『おとなの週末』では、何度も取材した。ときには表紙に使われたこともあった。↑上の写真は「どてオムライス」。トロトロになるまで煮込んだ牛すじとフワフワのオムレツをご飯の上にのせた、『島正』ならではの一品だ。

5月の初め頃、『島正』から便りがあった。何でも、今年で創業70周年を迎えるそうで、名古屋観光ホテルでパーティーを開催するという。私は取材先と持ちつ持たれつの関係でありたいので、レセプションなどには参加しないことに決めている。しかし、今回のパーティーは会費制だったので参加させていただくことにした。

パーティーには常連客を中心に約300人が集まった。講談やフラメンコ、サックス演奏、太鼓などさまざまな催しがあった。ホテルならではの美味しい中華料理も楽しめた。二代目の大将として店を切り盛りしてきた喜邑定彦さんの話が心に響いた。

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「私はお客さんに対して依怙贔屓をする。常連のお客さんだって、好き嫌いがある。“おもてなし”という言葉があるが、本当のおもてなしとは“うらおもてなし”だと思う」と、喜邑さん。横に立つのは、女将として喜邑さんを支えてきた妻の和子さん。

まったく、その通りだと思った。最近ではとかく「お金を払ってるんだから」と、客が上から目線になる風潮がある。だからといって、何をしても許されるということではない。忘れてはならないのは、店の大将も、従業員も感情を持った人間なのだ。当然、不条理なことがあれば「おとといきやがれ!」ってなことになる。当たり前だ。「店は客が育て、客も店が育てる」のが正しい。

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さらに喜邑さんは、

「先代から店を継ぐとき、もの作りをめざそうと。よいものを作れば必ず売れると思った」とも話した。たしかに、巷の味噌おでんや串かつとは完全に一線を画している。それは仕込みの丁寧さだ。例えば、大根。こんなにもエッジの立っている味噌おでんの大根はここ以外で見たことがない。

その信念を曲げず、今もなお店を続け、70周年を迎えたということは本当にすばらしい。おそらく、パーティーに参加したすべての人は、『島正』が歩んできた70年という歴史の重みを実感したに違いない。それを祝う場に招かれたことが私はとても光栄に思った。

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↑先代から「父親の私を超えた!」と太鼓判を押された三代目大将の喜邑竜治さん(左)。もう出会って15年以上になるが、忘れずにいてくださったのが嬉しかった。きっと、奥様や従業員の方と力を合わせて今以上に店を盛り上げてくださるに違いない。竜治さん、またお店に行きますね♪

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おまけ。今回のパーティーで司会を務めたフリーアナウンサーの平野裕加里さんと、私と同じ名古屋めしを取材しているフリーライターの大竹敏之さんと記念写真。

平野さんは、大昔に『ぴーかんテレビ』に出演させていただいて以来、こうしたイベントでよくお目にかかっている。また、大竹さんはフリーになったばかりの頃から尊敬している大先輩だ。私なんぞのような木っ端ライターは足元にも及ばない。

ところで……。大竹さんと私が“仲が悪い”というデマを流している奴は誰だ!? あらぬ誤解をされないようにパーティーにはペアルックで行った(嘘)。平野さん、大竹さん、ありがとうございました!これからも共に名古屋を盛り上げてまいりましょう♪