永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

職業病。

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同じ文章を書く仕事でも、小説家とライターは頭の中の構造、というか思考回路がまったく違うと思う。私の知り合いに童話作家がいるが、やはり空想するのが好きで、その中からストーリーを作り上げていくと言っていた。

私にそんな芸当はムリである。見たものや聞いたことをできるだけ正確に、リアルに伝えることしかできない。いや、私の場合、すぐに感情移入してしまうのでそれすらも危ういな(笑)。

相変わらず文章を書くことの苦手意識は消えない。でも、原稿を書くときに取材した人や料理のことを思い出すという行為は好きだし、楽しい。取材相手の視線や口の動き、声、そして現場の雰囲気、匂いを一つ一つ思い出していくと、まるでタイムスリップしたような感覚に陥る。

そして、その現場で自分は何を感じ、何を思ったのかも併せて文章を綴っていく。私の場合、自分で撮影した写真も残っているので、よりリアルに記憶の糸を辿ることができる。これは正直、ありがたい。

しかし、これも職業病なのだろう。仕事、プライベートに関係なく、そこで交わされたひと言がずっと忘れられなかったりする。自分にとって嬉しい、ありがたいことであれば、それはエネルギーとなる。逆に心をえぐられるようなひと言はトラウマになって、いつまでもいつまでも苦しむ。

思い出しては消し、また思い出しては消す。何度も消し去ろうと試みるも、消えない。唯一、忘れられるのが仕事をしているときだ。取材した日に見たものや聞いたことを思い出してタイムスリップすると現実から逃避できるのだ。また、写真を撮っているときも目の前の被写体に集中しているので嫌なことは全部忘れることができる。

若い頃、嫌なことがあると、ずっと引きずったままだった。仕事をしまくって忘れられるようになったということは、少しは大人になったのだろうか。

※写真は、名古屋駅西の干物と海鮮がメインの居酒屋『盛介』のコースメニュー。