永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

報酬と謝礼。1

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一般人、というかメディアに関わりのない人の感覚からすると、「テレビに出ている人=稼いでいる人」という図式になるらしい。私も2005年開催の愛知万博の前あたりから年に数回くらいテレビに出させてもらっている。たまたまそれを見た人から、

「ナガヤさん、稼いでるよねぇ。テレビ出まくりだもんね」と言われることも少なくはない。そりゃ芸能人が暮らす豪邸や乗っている高級車、訪れる高級店などをテレビや雑誌で見れば、そんなイメージを抱くのはムリもない。では、私の家は豪邸か?私の車は高級車か?私はしょちゅう高級店へ足を運んでいるのか?答えは「否」だ。

芸能人がテレビに出ると、報酬、つまり、ギャラが出る。私のような木っ端カメラマン&ライターが出ると、ギャラではなく謝礼が出る。謝礼。労働に対する対価ではなく、番組制作に協力してくれてありがとう、というお礼を形にしたものだ。

具体的な金額を公表するのは控えるが、テレビの収録に半日かかろうが、丸一日かかろうが、報酬ではなく謝礼。言うまでもなく、私は芸能人ではない。一般人でもない。と、なると、いちばん近いのが評論家やコメンテーターのような文化人だ。おそらく、局に文化人枠的な規定というか、ガイドラインのようなものがあるのだろう。

しかし、こちらから申告しないとスルーされることもある。そうなると、規定があるのかどうかも疑わしい。もっと悪質なものになると、ギャラについて訊ねると

「上の者に聞いてみます」と言ったきり、収録が終わることもあった。面倒くさいし、金にウルサイ奴とも思われたくないので私も深追いはしなかった。まぁ、収録前に確認しなかった私もいけなかったのだ。

一つだけ弁解させてもらおう。雑誌の場合も事前にギャラの話はしない。最近ではギャラの詳細について伝えてくれる編集者も増えたが、まだ少数派だろう。カメラマンやライターは記事が掲載されて、ギャラが振り込まれてからその金額を知るのである。私が取引している出版社は、「はぁ?」と通帳を二度見するようなギャラが振り込まれることはないから安心して仕事を請けられるのだが。

出版社のそのような慣習もいかがなものかと思うが、ずっとそんな環境で仕事をしてきた。仕事をすればいくらなのかわからないギャラが振り込まれるという仕組みが私の身体には染みついているのである。だから、ギャラの交渉をするのに慣れていないのである。

かなり生々しい話になってしまった。読者の皆様も興味があるだろうから、明日もこの話題について書く。

(つづく)

※写真は、愛知県豊田市の豊田市美術館内にある『味遊是(ル・ミュゼ)』の魚料理「天然鯛のポワレ ノイリーのソース」。で、この写真が使われた記事は↓こちら。

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