永谷正樹のなごやめし生活

「なごやめし」について書き綴ります。

上井克輔さん。

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昨年1月、50歳を迎えるにあたって、私は、これまでやってきたすべてのことを否定した。自分の中でなかったものとしなければ、この先カメラマンとして生きていけないと思ったのだ。その上で、「できた」ことを自問自答しまくり、それをも否定して削ぎ落としていった。

結果、たった一つだけ残ったのが、「カメラマンになった」という事実だった。カメラマンとして1枚でも多く写真を撮り、ライターとして1文字でも多く文章を書くことが、リスタートする唯一の道であると思い、それまで効率や利益を考えて写真や記事を別の媒体に使い回ししていたのをやめた。

と、なると、新たに取材せねばならない。しかも、ネット媒体ゆえに交通費も駐車場代も撮影のために作っていただいた料理の代金も出ない。そこでFacebookで繋がっている飲食店の店主やオーナーに向けて、「取材をさせてください」とFacebook上でお願いをすることにした。

ありがたいことに何十件にも及ぶコメントやメールが殺到し、現在も順番にうかがわせていただいている状況である。メールの送り主の中には、名古屋の超有名店のオーナーもいた。名古屋・新栄の『壺中天』オーナーシェフの上井克輔さんもその一人である。

www.kochuten.jp

上井さんとの出会いは、『STORY』の取材が縁となった。が、たった一度取材しただけで、メールをいただくまでFacebook上でやりとりをしていたわけではない。お目にかかってから1年以上が経っていた。メールはこのような内容だった。

「今日、永谷さんの記事を見てブログも読ませていただきました。同じ年齢という事もあり、非常に似た部分が多いと感じました。50を前に私も色々と思う事がございます。何か私にとっても精神的にプラスになる様な気がしまして。ご縁があれば是非取材等よろしくお願いいたします」

ただ、ただ、泣けて仕方がなかった。たった1度だけしかお目にかかったことがないにもかかわらず、こんな私と会って話がしたいと思っていただいたことが嬉しくて、ありがたかった。

その後、豊田市美術館内にある姉妹店『味遊是』を取材させていただき、再び上井さんにお目にかかることができた。

danro.asahi.com

とはいえ、あくまでも取材なので、話題はどうしても店の話や料理の話になってしまう。時間も限られるので、上井さんのことをもっと知りたくてもタイムアウトとなってしまう。

そんな中、今年1月13日に私はブログにこんな記事を書いた。

nagoya-meshi.hateblo.jp

「ポジティブ、ネガティブという二元論をドカーーーーーン!と突き抜けているエネルギッシュな人とプライベートで食事や飲みに行きたいと思ってる」と、何人か実名を挙げたのだ。その中にちゃっかりと上井さんも入れておいたのだ。すると、その日に連絡があり、互いのスケジュールをすり合わせた。

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で、一昨日、上井さんとのサシ飲みが実現したのである。メールをいただいてから1年近く経っていた。場所に選んだのは、私が大好きな錦3丁目『鮨古川』。

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大将の握る寿司を堪能しながら、話した。いっぱい話した。話題が途切れることなく話し続けた。まるで古くからの友人が再開したかのように。上井さんもまた、50を前にして苦悩の日々を送っていた。これまでの生き方を貫き通すか、それとも変えるかの選択を迫られていたことを洗いざらい話してくれた。

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私もまた、自身の不甲斐なさや女々しさをすべて告白した。誰にもわかってもらえないと思っていたが、上井さんは一つ一つ、大きく頷きながら話を聞いてくれた。そして、自身の壮絶な体験を交えながら励ましてくださった。断っておくが、傷を舐め合うなんて受け止めないでいただきたい。そんな生ぬるいものではないし、甘っちょろいものでもない。

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同い年であり、ジャンルこそ違えど互いにモノをつくるという立場にある。だからこそ、上辺だけの会話ではなく、魂の底からわかり合える部分があるのだ。いわば、男同士の、命と命の磨き合い。会話のひと言ひと言が心に刺さり、過ぎていく一分一秒が尊く思えた。

上井さんは、生き方はそのままに、スタイルを変えようとしている。その姿はどこか吹っ切れたようだった。私はというと、いまだに迷いながら生きている。相変わらず、不甲斐ないし、女々しい。他人には寛容になれても、自分には不寛容極まりない。

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生き方を貫き通すという答えは出ているものの、いつも心はグラグラと揺れている。ほんと、中途半端だ。きっと、まだまだオノレ自身とオノレの生き方にきちんと向かい合っていないのだろう。それに気がつくことができただけでもサシ飲みした甲斐があったというものだが。次に上井さんにお目にかかるときは、カメラマンとして、人として、男として、少しでも成長していたい。

上井さん、ありがとうございました。また旨い料理と旨い酒をアテに語り合いましょう。