永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

笑顔。

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先日、取材でお世話になっている店のテイクアウトメニューを撮影させていただいた。その際、店の方の写真も撮らせてもらった。いつも取材の終わりにしていることでもあり、中にはこれまで何度か撮ったことのある方もいた。

いつもと変わらない話。いつもと変わらない笑顔。いつもの通り、私はシャッターを切る。その間だけは、コロナ禍であることを忘れていた。いや、正しくは、仕事場に戻ってPCで撮影した写真を見るまで、だな。

新型コロナの影響で大きな打撃を受けているはずなのに、何なんだ、この表情は。皆、懸命に生きているのだ。あくまでもテイクアウトメニューの撮影が目的だったが、私はこんな写真が撮りたかったのだ。と、いうか、お世話になっている店の人たちと会いたかった。写真はその結果にすぎない。

悲しいときは泣けばよいし、腹が立ったときは怒ればよい。そんなことはこのブログで幾度となく書いた。でも、いつまでも泣いてはいられないし、怒ってもいられない。いつかそれを振り切って立ち上がらねばならないときが必ずくる。まずは笑うことだ。それで運命は陽転する。間違いない。私は取材を通じてそんな人を何人も見てきた。

何度も言う。人はいくら辛くても、悲しくても、這い上がることができる。その渦中にあっては、心からは笑えないかもしれない。でも、無理矢理にでも口角を上げて、目尻を下げる。それだけで脳は笑っていると捉えて、幸福なホルモンを分泌する、と何かの本でも読んだことがある。

人が笑っている写真に、これまで私はどこか嘘くささを感じていた。それを撮る私自身に対しても。人はそんなにも単純なものではない。悲しみや苦悩、憂い、人の感情のすべてを撮りたい、記録したいと思っていたし、今も心のどこかでそう思っている。

ノー天気な笑顔ではなく、辛いことも悲しいこともいっぱい経験した人の笑顔。それは人の心を動かして、世界ヲ明ルクする。私のやるべきことはそこにあるのではないかと思いはじめた。飲食店を取材する際に撮らせてもらう写真もそうだが、これからはじまるメイク&フォトも然り。

生きてりゃいろいろある。私だって例外ではない。つまらないことで向かっ腹を立てることもあれば、オノレの不甲斐なさに心の中で泣くこともある。でも、カメラを向けたら、煩わしいことはすべて忘れてニッコリと笑ってもらえるようなカメラマン、いや、その前に人間でありたい。