永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

試みの名鉄犬山線。1

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50代半ばくらいまでの男性にとって、人生相談といえば、かつて『ホットドッグ・プレス』に連載していた北方謙三の「試みの地平線」。悩める青少年から寄せられた相談にハードボイルド作家がハードボイルドに答えるというもの。例えば…………。いや、今回のブログは学生も読むので具体例を挙げるのはよそう。

興味があれば、ググるか、お父さんに聞いてみよう(笑)。とにかく、毎回とてもハードボイルドとは思えないトンデモ回答の連発だったのである。

さて、一昨日のことだが、やたらとブログのアクセス数が多かった。関西大学総合情報学科のリモート講義『永谷正樹、という仕事。』が行われ、それを受講した学生たちが私のブログを見に来てくれたようだ。

お声を掛けてくださった編集者の亀松太郎さんによると、非常に好評だったようで、沢山の質問も寄せられた。今回の講義は3回目となるが、これまででいちばん質問が多かった。そこで、このブログを使って、質問に答えていこうと思う。

題して、『試みの前立腺』(笑)としたかったが、女房に相談したところ、汚いものを見るような目で全否定されたので『試みの名鉄犬山線』。質問の数が多いので、何回かに分けて紹介する。では、いくぞー!

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(1)働くこと全般について

 

・初めのころは、ブラック企業ばかりに就職されたと話しておられましたが、その当時は今のようなブラック企業を見極めるすべはなかったのでしょうか。

 

今のように、ネットで何でも情報が入るわけではなかったから、見極める術はありませんでしたねー。

それと、写真やコピー(文章)、デザインなどクリエイティブな世界は長時間労働で休みも少ないのが当たり前だと思っていました。

昔と比べて今は労働環境や待遇も格段に良くなっていますが、本当に良いモノを創りたい!と思っている人にとっては働きにくいかもしれません。

 

・ブラック企業であった編集プロダクションに転職した際に、おそらく本当に大変だったと思うんですが、同僚がやめていく中でどのようにしてモチベーションを保って、何がそこで働き続ける原動力になっていたのですか?

 

たしかに、大変ではありましたが、それ以上に楽しかったんですよね。今もそうですが、「楽しさ」に勝る原動力はありません。

この仕事は、スケジュールの管理能力が求められるので、向き・不向きがハッキリと分かれます。同僚が辞めていくのは仕方がないと思っていました。

 

・したいことがはっきりしないときどうすればいいですか

 

はっきりさせることです(笑)。私の場合、「お前のやりたいことは何なんだ!?」って自問自答しまくって、やりたくないことを一つずつ頭の中から消去していきました。

とことん、徹底的に突き詰めた結果、残ったのが写真と文章、そして、喋ることだったのです。試してみてください。

 

・どうやってそこまで1人で切磋琢磨し続けてこれたのですか?

 

んー、別に切磋琢磨してるつもりはありません。ただ、自分の好きなことを好きなだけやっているだけです。やるからには上手くなりたいと思うのは、スポーツや音楽も同じだと思います。

ただ、写真や文章というのは、テクニックだけでもダメなんです。心に響くものを見たり聞いたりするのも大切ですから、やはり映画や本は沢山見ますね。

 

・永谷さんが社会で働いていく中で、最も大切だと考えることについて、ご教授頂きたいです。

 

社会的落伍者の私にそれを聞くか(笑)。講義の中で話したと思いますが、「お前は何者か?」と常に自問自答しているわけです。そのとき、心の中のもう一人の自分が「そうだ!それがお前だ!」とか「違ーう!それはお前じゃない!」と、囁きます。

私は「内なる自分」と呼んでいますが、「内なる自分」に対して正直に生きることがもっとも大切だと思っています。

 

・永谷さんに聞くのは違うかもしれません。私はやりたいことがありません。やりたいことがあっても努力するほどには本気にはなれないし、才能があるものや秀でる分野でもないと感じます。見つけ方が知りたいです。

 

やりたいことがなくても、好きなことはあるでしょう。何をさておいても、これがいちばん好き!というものが。それを突き詰めてください。

ジャンルは何でもイイんです。突き詰めて、突き詰めていけば、いつの間にかその道のプロになれます。

 

・永谷さんは今の好きな仕事をする前に、いろいろ苦労したと思いますが、「あ、自分がしている仕事もしくはやっていることは間違っているな」と感じた時は、どうすれば、良い道を見つけましたか?

 

うーん、苦労したとは思ってないんですよね。営業の仕事をしていたときは、そりゃ嫌でしたよ。でも、フリーになって出版社へ作品を持ち込んだとき、営業をやっていてよかったと思いました。人生に無駄なことは一つもないんです。

 

・生まれ変わったら、今の仕事と昔の仕事のどちらを選びたいですか。

 

そりゃ今の仕事でしょう。でも、小中高と猛勉強して関西大学総合情報学科に入学して、まったく別の道を選ぶかもしれませんね(笑)。

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(2)就職・転職について

 

・就職活動をするにあたり1番大切にしていたことはなんですか。

 

仮に給料の高さで選んだ場合、現在の新型コロナがまさにそうですが、世の中の状況が変わったときに給料やボーナスが下がる可能性だってあるわけです。

だから、本当に自分が好きなことや、やりたいことを仕事にするのが一番大切だと思います。まだ若いのでいくらでもやり直すことができますから、失敗を恐れずにチャレンジしてください。

 

・転職の際に、前の会社よりも「より稼げる」というポイントでは会社を探さなかったのですか?

 

1ミリもありませんでした。前に答えたように、「本当に自分のやりたいこと」だけで会社を探し、選びました。

 

・転職した際の心境やその決断をするにあたってどのくらい悩んだかなど教えてくださると嬉しいです。

 

そりゃ現状の辛さから逃げ出したいという気持ちはなかったといえばウソになります。でも、それ以上に、自分のやりたかったことと違うという気持ちが大きくて決断しました。

今と違って、当時は転職してステップアップするというのも一つのスタイルだったこともあり、決断して実行するまでそんなに時間はかからなかったと記憶しています。

 

・もし初めての就職先が合わないと感じれば、転職や独立は20代で行うべきでしょうか?

 

当時は30歳までにフリーになろうという気持ちもありました。結果的に私は26歳で独立しましたが。自分の中でサラリーマン生活に期限をつけたから決断できたとも思います。だから、今思うと、フリーになったばかりの頃は、本当に世間知らずだったので、編集担当や取材先に迷惑をかけたと思います。

ただ、編集担当との打ち合わせや取材先でのインタビュー時など、わからないことがあれば、決して知ったかぶりをせず、「わかりませんので、教えてください」と何でも聞くようにしました。皆、とても親切に教えてくれました。若いライターを育てていこうという雰囲気があったんですね。今ではとても感謝しています。

 

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ふぅ……。まだ、質問の半分も終わっていない。この続きはまた明日ということで。

亀松さんから、これらの質問とともに、受講した学生の感想文も送っていただいた。その数、なんと、約200件

今さっき、ようやく読み終えた。ほとんどすべて私の講義を肯定的に受け止めていた。それだけ就活が新型コロナの影響を受けているのだろう。亀松さんは、

「多くの学生が自分の就活と永谷さんの話を重ねて、自分ごととして聞いていました」と、分析する。

学生諸君、こんな時代だからこそ、本当に自分の好きなことや、やってみたいことに主眼をおいて就活してみてはいかがだろうか。たしかに、リスクはある。

実際、新型コロナの影響で、私も4月の半ばから5月の後半まで1ヶ月以上、ほとんど仕事らしい仕事はなかった。フリーなので、当然収入は絶たれる

でも、自分で選んだ道なので仕方がないと諦めもつく。これが、もし、自分がやりたくないことをやっていたら……。きっと、誰かのせいにしていたと思う。最終的にその道を選んだのは自分のはずなのに。

まぁ、私は諦めなかったが。緊急事態宣言の外出自粛期間は、HPや動画の制作など、今までやろうと思っていたけど、なかなかできなかったことをしていた。で、HPが完成したおかげでテレビ出演オファーもいただいた(笑)。

もちろん、不況に強い、安定した企業に就職して安定した人生を送るのも一つの方法である。でも、“こっち側”の人生も楽しいぜぇ(笑)