永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

試みの名鉄犬山線。2

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では、昨日に引き続き、今日も関西大学総合情報学科のリモート講義『永谷正樹、という仕事。』を受講した学生から寄せられた質問に答えていく。さぁ、いくぞー!

 

(3)カメラマンという仕事について

 

・一番最初に、カメラを扱う職に興味を持たれたキッカケはなんでしょうか。また、グルメ記事を書く際の、取材対象は何を基準に決められていますか。

 

もともと、絵を描くのが好きだったんですよね。で、将来はマンガ家になろうと思っていました。でも、中学校へ入学すると、自分なんかよりもはるかに上手いヤツがゴロゴロといるわけですよ。こりゃ敵わないと思って諦めました。

中学2年生の頃、腹違いの兄からカメラをもらいました。それも、当時のプロカメラマンが使う、「キヤノンF-1」という超高級一眼レフを。聞いてみると、兄は友人から借金のカタとしてもらったものだったそうです(笑)。

ファインダーを覗いた瞬間、本当に、世界が変わりましたねー。もう、夢中になって撮影してました。当時は、自宅近くにある名古屋空港を離発着する飛行機を追いかけ回していました。

グルメ記事を書く際の基準は、当たり前ですけど、その料理が美味しいこと。その料理を作った人が魅力的であること。そこに尽きます。

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↑写真は愛知県春日井市にあるうどん店『えびすや 勝川店』のご主人ですが、彼に限らず、美味しいものを作る人って皆、イイ顔してるんですよ。取材終わりに撮らせていただく料理人のポートレートが私のライフワークなんです。

 

・永谷さんは、「カメラマンになりたい」という軸がある上で仕事を選択し、その仕事を通して軸を広げていらっしゃるように見えました。では、最初の「カメラマン」という志は、どのようにして得たのでしょうか。

 

うん。たしかに、軸は写真にあるかもしれないですねー。カメラマンを志したのは、やはり、写真を撮ることが楽しかったからです。ずっとシャッターを押していたいなぁって。シンプルでしょう(笑)。

料理や人にレンズを向けて、ファインダーを覗いて、シャッターを切る。今でも、この瞬間に自分が「生きている」ことを実感しています。

 

・最初カメラの世界からライターに移った時カメラに未練はありましたか?

 

いやいや。ライターに移ったわけではありませんから。仕事の90%以上は、写真と文章の両方をセットで依頼されます。逆に文章だけの仕事はほとんどないですね。

ただ、締め切りに追われて、毎日毎日、原稿を書いていると、無性に写真が撮りたくなります(笑)。そういうときは、デスクにカメラを置いて、休憩のたびに触っています(笑)。

 

・最初はカメラマンのみを目指していたそうですが、それを決めたのは何歳ぐらいですか?

 

前にも書きましたが、初めて一眼レフを手にした中学2年生の頃です。

 

・食べ物を美味しそうに撮るコツを教えてください。

 

それは……教えらんねぇなぁ(嘘)。テーブルに料理を置いて、まず、椅子に座った状態で料理を眺めます。そこからの目線よりもやや低めのアングルから撮ってみてください。

あと、お店であれば、窓際の席に座って、逆光、つまり、カメラの位置の反対から太陽光が差し込む状態で撮影します。それだけで全然変わってくると思います。

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↑昨日のお昼に作ったネギチャーシュー丼を、目線よりもやや低めのアングル&逆光で撮影してみました。一眼レフで撮影したので、明るさをコントロールできましたが、シャッタースピードも絞りもオートのスマホでここまでの写真は撮れないと思います。

その場合、「Snapseed」などの画像加工アプリを使って明るさを調節します。なお、アプリの使い方は別の講義で説明したので、ここでは割愛します。講義を受講した友達から教わってください。

 

・新米カメラマンとしてプロを演じて冷や冷やした、とお話しされていましたが、その際に、勉強しても実力が足りず断念した、もしくは失敗したことはありますか?そのときはどう対応されましたか?

 

断念したことはないです。できるまで、というかある程度形になるまで練習しますから。それも会社は認めてくれました。

ただ、失敗は数えきれないほどあります。今でこそ少なくはなりましたが、若い頃はしょっちゅうでした。そのたびに謝りまくって再撮影、というパターンです。

すごく惨めでカッコ悪いと思いましたね。でも、失敗しても会社の上司やクライアントは許してくれました。それが若さの特権だったと今では思っています。だから、失敗を恐れずにどんどんチャレンジすればイイんです。

 

・写真は芸術の枠組みに入ると考えていますが、芸術は人それぞれの評価の仕方があって一概に答えはないと思います。これをふまえて写真を撮るときに工夫していることはなんですか。

 

写真は芸術か否か。その答えは私も出せてはいません。ただ、一つ言えるのは、センスが重要であるということです。センスも人それぞれの好みがありますから、写真を見た100人が100人とも良い評価を下すとは限りません。せめて半分の50人くらいには支持してもらいたいと思って撮影しています。

 

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(4)ライターという仕事について

 

・学歴に縛られることなく記者の範囲が選べたらどんな分野の記者になりたかったのですか?

 

新聞記者や、政治、経済など専門的なジャンルを扱う記者は学歴が必要かもしれませんが、ライターは基本的に学歴は不問です。それよりも、取材相手からコメントを引き出すコミュニケーション能力や文章の表現力が求められます。

あと、ジャンルですが、とにかく料理が、料理を作る人が好きなので、それ以外のジャンルはあまり考えたことがありません。

あ、貧困問題や教育格差などには興味があります。これは将来、自分のジャンルとして仕事をするかもしれません。

 

・私は文章を書くのが本当に苦手なのですが、初めのころのライターとしてどのように記事をどのように記事をかけるようになったのか気になりました。

 

私も文章を書くのが大の苦手でした。それこそ、たった400字の原稿を3時間も4時間もかけて書いていました。

私が書くのは、取材原稿。つまり、取材で聞いた話をまとめたものです。書くネタが多ければ多いほど、文字数を稼ぐことができるわけで、取材時に根掘り葉掘り話を聞くことを心がけました。それで長文も書けるようになりました。

料理で例えると、取材は食材の仕入れです。食材が少ないと作れる料理も限られてくるじゃないですか。調理が原稿を書く作業ですね。これもまずはいろんな調理法(書き方、文章のタッチ)があることを知ることです。

つまり、いろんな本や雑誌を読むということです。興味のある本や雑誌は、お金を惜しまず買っています。それがライターである自分の血となり肉となっていると思っています。

 

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(5)フリーランスについて

 

・フリーと聞くとどうしても専属の人よりも仕事をとって来なければならないので大変にかんじるのですが、どこかに所属している時とどっちの方が仕事が大変に感じますか?

 

そりゃ編集プロダクションで仕事をしていた頃の方が大変です。フリーだと自分のペースに合わせて仕事ができますからね。原稿を書かねばならないのに、モチベーションが上がらないことだってあるわけです。どこかに所属していると、そんな状況でも書かねばならない。結局、「やっつけ仕事」になります。私はそれが嫌で編集プロダクションを辞めてフリーになりました。

 

・動画ではフリーでやることのメリットを紹介していただいたのですが、逆にデメリットはありますか?あったら教えて欲しいです。

 

デメリットは何といっても、仕事がないときに尽きます。収入が絶たれてしまうんですよ!今、いただいている仕事も永遠ではないわけで、デメリットだらけです(笑)。でも、その苦しさをはるかに凌ぐ楽しさや、やり甲斐があるから、私はフリーという道を選びました。

 

・何かの組織に属さない仕事はオリジナリティが重要だと思いますが、フード系のお仕事の他にチャレンジしたいものはありますか。

 

組織に属していたとしても、オリジナリティは重要だと思いますよ。

もう15年以上、私は料理をテーマに仕事をしています。当初は美味しさを追求していました。より美味しいものを食べさせてくれる店を探していたのです。

しかし、取材を続けているうちに、人が美味しいと感じるのは、料理だけではなく、器やその空間なども含めてのことだと気づきました。もちろん、接客やサービスも重要ですよね。

料理人は、ただ単に美味しいものを作るだけではなく、器や店の雰囲気、サービスも演出する総合プロデューサーなのです。そこで私は、「旨い料理は、人にあり」と思うようになりました。

これからも彼らを追いかけたいと思っていますし、料理以外でも何かにこだわりを持っている人や頑張っている人を写真と文章で応援していけたらと思っています。

 

これで、やっと2/3が終了した。次回はいよいよ最終回!せっかくなので、私から学生諸君に何かメッセージを発信できればと考えている。

 

では、また明日。