永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

取材力を、極める。

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随分と長いこと文章を書くのが嫌いだった。毎日ブログを書いていれば好きになるだろうと思っていた。それでも、なかなか好きにはなれず、表現力やボキャブラリーの貧困さがコンプレックスになっていた。

転機が訪れたのは、一昨日。『東洋経済オンライン』の原稿を書いているとき、不思議なことにとても楽しく感じたのだ。自分なりに理由を考えてみると、原稿を書く前段階となる取材に辿り着いた。

取材もめちゃくちゃ楽しかったのである。私の専門であるグルメ取材ではなく、ある商品の開発秘話についての話。作る人も、売る人も、使う人も、皆が喜ぶ商品だと私自身がとても感動したのだ。

書いているうちに、その感動が再び蘇ってきて、最後までノリノリでスラスラと書くことができたのである。こんなことは1年に何回もあるわけではない。

文章だけで食っている人からすれば、鼻で笑われそうだが、やはり、よい原稿を書くには取材力がモノを言うのだ。フリーとなって四半世紀経つが、あらためてそこに気がついた。

いや、取材力、というのは違うかもしれないな。取材時にどれだけ相手に感情移入して、自分自身の心を動かすことができるか、である。ただ、それでいて相手を冷静に見る第三者目線も必要になる。それがないと、ただの提灯記事になってしまうからだ。

ご存じかもしれないが、私の屋号は『取材屋』である。もともと屋号として使っていたわけではなく、肩書きとして考えたものである。もちろん、その由来は写真も文章も両方やるからだ。わかりやすいでしょ?

『取材屋』という屋号で本当に良かった。文章力や撮影のテクニックを身につけるよりも、私の場合はもっと取材力を磨かねばならなかったのだ。ほんと、今さらそんな基本的なことに気がつくなんて情けないことこの上ないが、これから自分のめざす方向が見えてきた気がする。

極めるのだ。取材を。そして、取材を通じて、頑張っている人を応援したい。もしも、その人が人生に悲観していたら、寄り添い、励ましたい。自分の使命はそこにあるのではないかと思っている。だから、極めてやる。取材を。