永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

アポ取り。

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ライターやカメラマンの仕事は、取材のアポを取るところからはじまる。取材の約束をとりつけることができたら、あとは現場へ行って話を聞き、写真を撮って、原稿を書くだけ。アポが取れた時点で仕事の約7割が終わったと言っても過言ではない。アポを取るまでのリサーチや、それ以前の企画を考えるのがいちばん大変なのだ。

こうなったら何度も書いてやる(笑)。そんな苦労してやっとの思いで掴んだネタをテレビ局は簡単にパクる。常習犯は『ル○クルッ○こん○ちは』系列の某局。少なくともこれで3回目。

著作権を侵害されているわけではないし、法律上は何の問題もない。しかし、メディアは違えど、同じモノを作る立場としてはどうよ?という話なのだ。

以前にブログに書いたが、私が書いた記事の内容のみならず、構成まで丸パクリされたことがあった。その局から番組出演のオファーがあった。しかも、私の記事をテレビでも採り上げたいから出てくれ、と。しかも、ノーギャラのボランティア。

「恥ずかしくないですか?」と私が言うと、ディレクターは黙ったまま。でも、またパクったということは恥ずかしくないのだろう。それが『ル○クルッ○こん○ちは』系列局のやり方なのだ。それがわかっただけでもヨシとしよう。

いや、今回はそんなことを書くつもりはなかったのだ。アポ取りの話に戻そう。2003年頃、ということは、17年前か。ある実話系週刊誌で、読者層である中年男性におすすめのスイーツを紹介するという企画だったと思う。あれ?芸能人おススメの店だったっけな?何せ昔のことなので、そのあたりはよく覚えていないが、とにかくスイーツ店を取材することになったのである。

場所は大阪。当時、一世を風靡したスイーツがあり、その噂が名古屋にまで聞こえてくるほど有名な店だった。実話系週刊誌の場合、ヘアヌードのグラビアや風俗、ヤクザの記事が載っているため、断られることも少なくなかった。

その大阪のスイーツ店に電話をしたところ、「企画書を送ってください」と言われた。企画書の提出を求められる場合はだいたい取材NGのパターンである。半ば諦めて、数日後に電話をすると、なんと、取材を受けてくれることになった。

当時は大阪まで重たい機材を担いで新幹線で移動していた。新幹線から在来線に乗り継ぎ、店に到着した。で、ここからはいつもの通り。オーナーに話を聞いて、照明機材をセッティングして撮影、という流れですすめた。

撮影しながら、世間話もした。「いろんなメディアが取材に来てますよねー」と、話を振ると『おとなの週末』の取材を受けたことを喜んで話してくれた。当時、私も『おとなの週末』の仕事をやっていたこともあり、「名古屋へ出店したら取材に行きますね」なんて話をした。

無事に撮影が終わり、機材を撤収して最寄り駅から電車に乗って新大阪駅へ向かった。ホームで新幹線を待っているときに、さっき取材したばかりの店のオーナーから電話が入った。しかも、

「大変申し訳ありませんが、今回の取材はなかったことにしてもらえませんか?」と言われた。私は耳を疑った。せめて企画書が届いた時点で判断することはできなかったのか。どうやら、取材を受けた後にその実話系週刊誌がどんな雑誌なのかを知ったようで、ブランドイメージにそぐわないと判断したのだろう。

「ナガヤさんの交通費やギャラ、迷惑料もすべて当社が負担いたします」と、オーナーは言うが、私の一存では決められない。すぐさま編集部の担当デスクに電話をした。

予想通りデスクはブチキレた。そして、直接オーナーと話してくれることになった。10分ほど経ったころに電話が鳴った。

「結論から言うけど、今回はお蔵入り。交通費やギャラを相手方から受け取ってしまうと、恫喝した上にカネまで要求されたとか言われかねないから、ウチからは一切請求しない。もちろん、今回の経費とギャラは支払うから」と、デスク。

もう、怒り心頭だった。何よりも私以上にキレてくれたので私自身が救われた。さらに、デスクはこう付け加えた。

「『今回のことは、公にはしないけど、個人レベルの範囲内であなたの店のことはいろいろ言わせてもらう。私、仕事柄、結構顔が広いんで』って言ってやった」と。

個人レベルの範囲内でいろいろ言わせてもらう───。これほど相手にダメージを与えるセリフはないと思う。私も『ル○クルッ○こん○ちは』系列局のことは個人レベルの範囲内でいろいろ言わせてもらう。あっ、ブログに書いちゃった(笑)。黙っていられないタチなんで(笑)。