永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「喫茶めし」の代表格、焼きそば

東京で喫茶店に入ると、驚きの連続である。フードメニューが少ないのである。カレーがあればまだイイ方で、メニューの端っこにサンドイッチが載っている程度なのだ。しかも、やたらと高い。これではとても腹ペコを満たすことができない。えっ?喫茶店のフードメニューはあくまでも「軽食」だって!?軽食、すなわち軽い食事ということか。うん、それなら納得ができる。

なぜなら、名古屋では喫茶店でガッツリと食事ができるのだ。フードメニューがやたらと充実していて、ヘタをするとファミレスよりも多い店もあるほどだ。松花堂弁当風の日替わりランチを出している店も多く、ひと昔前はランチが喫茶店のドル箱だった。牛丼やうどんのチェーンなど安価に食事ができる店が増えてから、どの店も苦戦を強いられている。それでも喫茶店でランチをとる人はまだ多い。

名古屋の喫茶店のフードメニューをここでは「喫茶めし」と呼ばせてもらおう。定番のイタリアンスパゲティやピラフ、オムライス、味噌かつ定食をはじめとする定食類など喫茶めしのなかでも代表格は焼きそばだろう。イタリアンスパゲティと同様に熱々の鉄板で出されることが多く、その熱で焦げたソースの香ばしいこと!家で作るよりもスパイシーで濃厚な味わいであることも特徴である。それゆえにご飯と味噌汁が付いた焼きそば定食も人気だ。あー、喰いたくなってきた。

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写真は、JR中央本線大曽根駅南口の近くにある『喫茶 ビギナー』の「塩焼きそば」。えっ?あれだけソース焼きそばの魅力を書きまくったのに、なんで塩焼きそばなのかって!?いやいや、たしかにソースも旨いけど、これも旨いんだもん(笑)。

私が初めて食べたのは、もう15年ほど前になる。今でこそ塩焼きそばはいろんな店で食べられるし、カップ麺になるほどメジャーになっているが、当時はここにしかなかったのだ。ソースよりもシンプルに思えて、食べる前に何となく味がイメージできた。しかし、実際に食べてみるとその予想は見事に裏切られた。

強火で炒められたシャキシャキの野菜とコシのある麺が見事なまでに一体化している。塩とコショウの加減が絶妙なのだ。味に深みがあり、マヨネーズや目玉焼きの黄身と絡めて食べるとまた違った味わいになる。そして、このボリューム。何でも、マスター自身がお腹いっぱいになるかどうかが基準になっているそうで、塩焼きそばに限らず、どのメニューも食べ応えがあるのがここの特徴だ。ちなみに「大盛」も可能な上にご飯と味噌汁、漬物が付く「定食」も用意している。

「もともとメニューにはソース焼きそばしかなかったんだよ。それも人気があったんだけど、毎日同じものを作るのに飽きちゃって。違う味のものを作ろうと思って行き着いたのが塩焼きそばだったんだ。ポイントは自家製のニンニク油。これで炒めることで味に深みが出るんだよ」と、マスター。

詳しいレシピも教えてくれたので、何度か家で作ってみたものの、この味を再現することはできなかった。やはり、プロなのだ。最近、私自身も喫茶店で食事をしなくなった。久しぶりに食べに行ってみようか。