永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

イイ意味で期待を裏切られた「かつまぶし」

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写真は一宮市にある『とんかつ たる蔵』の「かつまぶし」である。その名の通り、とんかつをひつまぶしのように薬味とだし汁で食すメニューだ。ネットでこれを見つけたとき、正直、「これはない」と思った。いくら、ひつまぶし人気にあやかりたいとはいえ、これは強引すぎると思ったのだ(笑)。しかし、実際に食べてみると、見事に予想を裏切られた。

見た目からかつに使っているのはヒレだと分かったものの、かつにかかっているのはソースなのか?醤油なのか?それとも、ひつまぶしを意識して鰻のタレかもしれない。味がまったく想像できなかったが、答えは醤油ベースの自家製タレだった。これがヒレかつとご飯とを一体化させるコネクタの役割を果たしていて、めちゃくちゃ旨い!このタレに行き着くまでかなり苦労したそうだ。

「とんかつソースや鰻のタレ、だし醤油などいろいろと試しました。ご飯と合わせたり、お茶漬けにしたりすると、どうしてもバランスが悪くなってしまうんです。試行錯誤を重ねて作りました。詳しくは言えませんが、鰻のタレも入っています」と、オーナーの伏屋文克さん。

薬味はひつまぶしにも用いられる刻み海苔とワサビ、そして、塩昆布。これも本当によく考えられていると感心した。ヒレかつに昆布の旨みがくわわると旨みが倍増するのだ。もう、例えようのない旨さ!思わず、貪り食ってしまった。

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さらに驚いたのが、だし汁。通常、ひつまぶしは鰹だしを使うが、ここでは昆布茶。これもめちゃくちゃ合う!旨いのはもちろんだが、昆布茶であれば、いちいちだしをとる手間が省けるので、店側のオペレーションも楽になるというメリットがある。

この「かつまぶし」は、2000(平成12)年に系列店の『かつ秀 各務原店』で、巷のとんかつ店にはないオリジナルメニューとして考案されたという。当初は期間限定メニューだったが、人気が出たためグランドメニューにくわえられたのだ。

一部の店の名物だったひつまぶしが巷の鰻屋でも食べられるようになり、「なごやめし」を代表するメニューとなったように、この「かつまぶし」もその可能性は十分にあると私は思う。