永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

Y社長。その2

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Y社長が裁判の準備をしているとは露知らず、私はその後もいろんな媒体で名古屋の店を取材させてもらった。Y社長が訴えようとしている雑誌でも別企画で紹介したこともあった。以前よりも大きく採り上げられ、表紙にも写真が載った。

名古屋には「有名料理人がプロデュースした店」や「東海エリアに初出店した東京の有名店」がある。いずれも名古屋人が、いや、地元メディアが大好きなフレーズ。それにノセられた名古屋人が行列を作るという図式は令和の時代になっても健在だ。

しかし、その有名料理人とやらは、東京の有名店のシェフとやらがわざわざ名古屋くんだりまで来るのかという話。オープンしたばかりでメディアの取材が沢山入る時期には来るだろう。何せ“店の顔”なんだから。

Y社長は毎月必ず店に来ては味をチェックしたりしているというからスゴイ。で、名古屋へ来るときに電話をいただくようになり、タイミングが合えば一緒に食事や飲みに行ったりした。飲みの席でのY社長の武勇伝も数限りなくある。めちゃくちゃ書きたいけど、書けない(笑)。法的手段に訴えられたら私は確実に負ける(笑)。

そうそう、裁判の話だ。私が仕事で東京へ行ったときのこと。社長を訪ねて、店でいろいろ話をしているときに、

「永谷ぁ、実はな、○○○(雑誌名)に対して裁判を起こそうと思ってたんだよ」と、私はそこで初めてY社長の口から裁判の話を聞いた。話には続きがあった。

「もう、書類を提出するだけ、という段階になって弁護士から電話があってさ。『ダメだ。裁判を起こしても負ける』って言われちゃって。理由は何だと思う?」

Y社長には言わなかったが、某誌はケンカ慣れしているというか、裁判ウェルカムなのである。勝っても負けてもそ裁判沙汰になることで名前が売れて、結果的に売り上げを伸ばすのである。それにしても、弁護士が『負ける』と判断したのはなぜか。

「名古屋の店の料理写真、表紙に載っただろ?アレがダメなんだって」と、Y社長。そりゃそうだ。著しく名誉を傷つけられた!と訴えようとしているのに、「表紙に写真が載ってるじゃねぇか!」と言われたら、グウの音も出ない。かくして、裁判は回避されたのである。

ところで、Y社長がなぜ私の恩人なのか。それはまたの機会に。

つづく。