永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

延期。

このブログでもたびたび話題にしているイベント「メイク&フォト」。元を辿ると、昨年8月に名古屋市東区東桜にある料亭『神楽家』で開催された「スマホカメラ撮影講座」に行き着く。

そこでメイクアドバイザーの山村えり子さんと出会い、メイクと写真のコラボイベントをやろうということになったのだ。それが9月。その時点では、1回こっきりのはずだった。もちろん、仕事で芸能人やスポーツ選手を撮影することもあるが、あくまでも専門は料理写真。私にとっては気分転換的な意味合いも持つイベントだと思っていた。

とはいえ、開催する以上はお客様に喜んでいただこうと、会場探しからタイムスケジュールの作成などイベントに向けた準備も本気で取り組んだ。その中で山村さんのメイクや女性の美に対する考え方や想いを聞き、写真が果たせる役割について考えるようになった。

まず、大前提として、メイクは永遠のものではない。しかし、写真に残せば永遠となる。そこに私は「メイク&フォト」の意義を見出したのである。

しかも、山村さんのメイクは彼女自身がよいと思っているメイクを人に押しつけたりはしない。普段、その人がしているメイクをベースに施していくのである。ゆえに、変身メイクのように印象を大きく変えない。まさに美しさを引き出すメイク法なのだ。「日常を美しく生きたい」と願っている私と考え方も一致した。

「メイク&フォト」イベントは昨年末に開催した。私が想像していた以上に、会場に足を運んでくださったお客様は喜んでらっしゃった。「遺影にさせてもらうわ!」というお言葉までいただいた。また、お友達と一緒に参加されたある方は、カメラを向けてもまったく笑わなかった。理由を聞いてみると、

「幼い頃にカメラ好きの父親に撮りまくられて、狙った写真が撮れなかったときに文句を言われたんです。以来、写真が嫌いになって」とのこと。

「でも、せっかく来たんだから笑いましょうよ!」と私は声を掛け、話をしながらシャッターを切った。100枚以上撮影した中に、ほんの数枚だけ笑顔の写真を撮ることができたのだった。

イベントが終わって数日が経った頃、なんと、彼女は自分のFacebookのタイムラインに私が撮影した笑顔の写真を載せてくれた。それまでタイムラインはおろか、プロフィール写真も自分の顔を出していなかったのに。私たちはそれを本当に心から喜んだ。当日来られなかった方から「参加したかった!」とか「次の開催はいつ?」という問い合わせも多数いただいた。

「メイク&フォト」は、クラス会と同じである。クラス会には自分が不幸だと思っている人は行かない。今の幸せな自分を見てもらいたい、知ってもらいたいという人が行くのだ。「メイク&フォト」は、今の幸せな自分を記録する場なのである。だからこそ、大きな反響を呼んだのだと思う。

私も、山村さんもこの「メイク&フォト」を単なる一過性のイベントとして終わらせたくはないという点で意見が一致した。しかし、会場探しや集客など、実際に自分たちで行うとなると、かなりエネルギーを費やすのも事実。そこで、山村さんのメイクと私の撮影をパッケージで売り込もうと考えた。つまり、集客アップやイベントの目玉企画などに私たちを使ってくださいというスタンスである。

↑こんなチラシを作り、ツテを辿って企業様やお店様を訪問させていただいた。その中で真っ先に興味を示していただいたのが、トップの画像にもある通り、『三洋堂書店』様である。

とてもオシャレでステキなポスターやSNSでPRするための画像まで作っていただいた。会場の下見をして、イベント当日のシミュレーションも行った。本当は4/4(土)に会場となる志段味店様の店頭に貼り出したり、SNSで公開する予定だった。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大。何度も議論を重ね、悩みに悩んだ結果、お客様の健康面を第一に考慮し、自粛することで感染拡大防止に努めようという結論に達した。イベントの開催自粛にあたって、アドバイスや助言をいただいた『三洋堂書店』様にはいくら感謝しても足りません。ありがとうございました!

自粛するものの、これは中止ではなく、延期である。具体的にいつ開催するかはまだ何も決まっていない。まったく見通しがつかないのだ。でも、いつかは開催する。何としても開催する。絶対に開催する。それまで私たちは充電期間として、撮影とメイクの腕をしっかりと磨いておく。どうか、ご理解をいただき、開催を楽しみに待っていていただきたい。