永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

保守系団体の講演会、キライ。

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もう、10年以上前の話になる。私としては黒歴史として封印したい過去をここで告白しようと思う。当時、私はある保守系団体が主催の講演会へ頻繁に足を運んでいた。ゲストは田母神俊雄や金美麗、櫻井よしこ、竹田恒泰、山谷えり子、そして、野党時代の安倍晋三(敬称略)。保守系の人からすれば何とも豪華な顔ぶれである。

当時、私は彼らの著書を貪るように読んでいた。『たかじんのそこまで言って委員会』も欠かさず見ていた。彼らが著書やテレビで警鐘を鳴らしていることがあまり報じられないのは、メディアそのものが偏向しているからだと思い込んでいた。メディアの片隅で仕事をしているにもかかわらず、だ。

講演会で日本が直面している危機について話を聞くと、何としてもこの国を守らねばならないという気持ちが強くなっていった。と、同時に厄介な隣国や異論を唱える左翼への憎しみも生まれた。講師たちの受け売りで隣国を批判すると、実に爽快な気分になった。国を愛し、憂いている自分が誇らしく思えた。

当時は「悪夢のような」民主党政権。一刻も早く自民党が政権を奪還して、安倍さんが総理大臣に返り咲いてもらうことを望んでいた。そして、歴代総理大臣の誰もが手を付けなかった憲法改正を成し遂げて欲しいと思っていた。

今の世の中で起こっている事件や蔓延している閉塞感もすべて現憲法のせいであり。憲法を改正したらバラ色の世界が待っていると本気で信じていた。そんなわけで、当時、頻繁にテレビに出ては切れ味鋭い論説を展開して与党を批判する安倍さんを120%支持していた。ちょうどその頃、名古屋で安倍さんの講演会があることを知り、喜び勇んで参加した。

どんな話をされたのかは覚えていない。しかし、テレビ以上に過激な発言が多かったと記憶している。とくに民主党の批判は、会場が沸きに沸いた。これは当時の「保守系言論人の講演会あるある」だと思う。私も自分の意見を代弁してくれたように思い、割れんばかりの拍手を贈った。

安倍さんの講演会は、ほかの講演会ではなかった質疑応答の時間が設けられていた。総理大臣経験者に直接質問できるのである。かねてから私が疑問を抱いていたことをこの機会に聞いてみようと思った。

それは、歴代の自民党政権時代はアメリカの言いなりになっているように見えたが、思いやり予算等、アメリカからの要求を突っぱねることはできないのかということ。とくに軍事面でアメリカに依存してしまうことは真の独立国家とはいえないと思ったのだ。あ、この考えは今も変わっていない。

しかし、こんなことを聞いてしまってよいのかと頭をよぎった。手を挙げようか迷っているうちに誰かにマイクを向けられた。私と同世代くらいか、いや、私より若い人が質問に立った。

ところが、彼は安倍さんの話とはまったく関係のない話を一方的にはじめた。質疑応答ではなく、演説をぶちかましたのだ。ヘイト的な内容もあったと思う。それを誰も止めず、中には拍手をする者までいた。

あまりにも気持ちが悪くて吐き気を催した。コイツと同じ空間で同じ空気を吸っていることすら苦痛に思えた。コイツやコイツに賛同する者と一緒に居たらアホが伝染ると思った。以来、保守系団体の講演会には一切行かなくなった。

ほぼ同時期に鈴木邦男さんの本を読みはじめた。鈴木邦男さんは右翼だが、保守系団体とはまったく異なる意見を持っていた。言論の自由を何よりも重視していて、仮に意見が違っても相手を尊重していた。そんな彼のスタイルにどんどん惹かれていき、今に至る。

あー、今日も長くなってしまった。鈴木邦男さんや憲法についてはまだ書きたいことが沢山あるのに。これはまたいずれ書く。