永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

やさしい人でありたい。

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自分はなんて冷酷な人間なんだろう。ずいぶん長いこと、そう思っていたし、真剣に悩んでた。私の周りには、やさしくて愛深い人が沢山いる。そういう人と自分を比べて、「自分はあんな風になれない」と、落ち込んでいた。あ、今は違いますよ。若い頃ね。とは言っても40歳くらいまでかな。

今思い返せば、その頃は人の話を聞かなかったと思う。相手に対して一方的にガーッと話して終わり、みたいな。しかも、自分の考えは絶対に間違っていないという思い上がった部分もあったと思う。何の裏付けもないのに。

たしかに、間違ってはいない。でも、それは私の立場から見たときの考えであって、立ち位置が変われば意見も異なるのは当たり前の話だ。それに長いこと気がつかなかった。むしろ、バッサリと一刀両断するのが自分らしいと思ってた。はい、大馬鹿野郎です。人を裁いてばかりいると、自分自身が苦しくなるのである。

ライターという、いわば人の話を聞く仕事なのに、なぜだろう。振り返ってみると、原稿を書く前から自分の中で最初に結論を決めていて、インタビューはそこへ導くためのものだったかもしれない。もはや、インタビューなんかではなく、誘導尋問だ。あー、ただ、ただ、恥ずかしい。

今も自分が特別に温かみのある人間だとは思っていない。でも、悩むことは少なくなった。やはり、ライターという仕事に救われたのだと思う。いつ頃だったか、仕事でもプライベートでも、とにかく自分と出会う人のことがなぜか気になって気になって仕方がなくなった。

「ご縁」のありがたさというか、愛おしくてたまらなくなった。あ、男女問わずですよ(笑)。そこでじっくりと話を聞いているうちに、相手の立場に立って考えることができた。

私だったらどうするか、という自問自答は意味がない。相手がそう考えているのなら、それは間違いない。いくら自分と考えが違っていたとしても、受け入れることができた。きっと、私も年をとったのだろう。

願わくば、もっと多くの人と喜びだけではなく、悲しみをも共有したい。何でも受け止めてやれる自分でありたい。やさしい人でありたい。

 

※写真は、名古屋市昭和区にある鰻の名店『うな富士』の創業者、水野尚樹さんと、『かぶらやグループ』の代表、岡田憲征さん。お二人とも人格者であり、見習いたい部分はいっぱいある。