永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

職務放棄。

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基本的に、取材は楽しい。ずっと取材をしていたいがために、屋号を『取材屋』と命名したほどである。が、1年に1回あるかないかくらいで嫌な思いをすることがある。それを不意に思い出してしまった。

それはある喫茶チェーンを取材したときのこと。私は業種を問わず、大手チェーンは基本的に取材しない方針なのだが、雑誌の特集内容からやむを得ない状態でもあった。

広報の担当者に電話でアポを取ると、すんなりとOKが出た。大手になると、企画書を出せとかいろいろと面倒くさいことを要求されるのが常だけに、これには少し驚いた。その喫茶チェーンはほとんどの店がFC店。取材先は数少ない直営店を指定された。

このあたりのやりとりも非常にスムーズに進んだ。取材慣れしているのだろう思った。ところが、取材当日、担当者は現場には来なかった。仕方がないので、店にいる「社員」から話を聞くことにした。

取材が終わったら、用意していただいたメニューや店内、外観、社員さんの写真を撮影。そして、メニューの代金を支払って店を後にした。ここまでは、広報の担当者が取材に立ち会わなかったこと以外は順調に進んだ。

数日後、担当者から連絡があった。話を聞いてみると、「記事のゲラをチェックさせてほしい」とのこと。その雑誌は、取材先にゲラチェックをさせないことを方針としており、私はその要求を突っぱねた。撮影したメニューの代金を支払っているのも文句を言わせないためでもあった。

しかし、担当者は「見せろ」の一点張りで一歩も引かない。もう、この時点で金輪際、このチェーンは取材しないと心に誓った。編集長に相談すると、「仕方がないので見せてやって」との指示が出た。

不本意ではあったが、ゲラをメールで送った。すると、修正の指示だらけで戻ってきた。「だからチェックする必要があったんです」と、ドヤ顔で。メールだから見てないけど。きっと、最上級のドヤ顔をしていたに違いない。

修正箇所をチェックすると、とくに駐車場の台数などデータの部分が多かった。ちなみにそれらは、広報担当者に代わって取材に対応してくれた「社員」に聞いたものをそのまま書いただけである。

ってことは、こちらに落ち度はない。それを私は最上級のドヤ顔で指摘した(笑)。すると、「こちらで確認してみます」と返信があった。

翌日、自身のミスを認めたメールが届いた。しかし、そこに謝罪の言葉はなかった。それどころか、「今後はゲラのチェックが出る媒体の取材をお願いします」と書いてあった。取材に行く気持ちどころか、客として行くのも嫌になった。

そもそも、取材に立ち会うという職務を放棄すること自体が広報として失格ではないのか。地元のメディアは、そのチェーンから新メニューが発表されるたびに大騒ぎしているが、私はそれを冷めた目で見ている。

グルメ取材の場合、取材先とメディアはどちらが上とか下とかではない。基本的に美味しいと思ったから取材するわけで、お互いに気持ちよく仕事ができればそれでよいのだ。それをわかっていないお馬鹿さんを相手にしているヒマはない。