永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「名古屋ライター」からの卒業。

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取材のアポをとった時間よりも早く現場に着いたので、近くの本屋で時間を潰すことにした。本屋へ来ると、何だか頭がやわらかくなったような気分になり、いろんな企画が浮かんでくる。最近、本はもっぱらAmazonで買っていることを少し反省した。出版業界で仕事をしている以上、本屋にも足を運ばねば。

いろんなジャンルの本が並ぶ中、目に止まったのは、地元名古屋のことをまとめた、いわゆる「名古屋本」のコーナー。昔は今のように種類も多くはなく、名古屋という街と、そこで暮らす人々の特徴が浅く広く書かれたものばかりだったと思う。

ところが、今の名古屋本は、ピンポイントに定めたテーマを、より深く論じている。その最大の功労者であり、第一人者が大竹敏之さんだろう。彼が名古屋本というジャンルを切り拓いたことで、後に続く地元ライターたちに道筋をつけることができたのだと思う。

大竹さんをはじめ、名前の知らないライターさんが書かれた名古屋本が平積みになっているのを見て、一つ気がついたことがある。少し前だったら、どんなことが書かれているのか気になって、手に取ってページをめくっていた。さらには、面白そうだと思ったら値段に関係なく買っていた。

ところが、表紙を見てオシマイ。手にも取らなかった。自分の中でこれっぽっちも興味がなくなっていることに気がついたのだ。あ、私はフードライターなので、「名古屋めし」なら興味はある。が、「名古屋めしライター」とは名乗りたくない。あくまでもフードライターなのである。

万博開催前の2000年代初頭、名古屋について調べたり、取材をして、数多くのメディアでそれを発表してきた。正直、日本テレビ『秘密のケンミンSHOW極』的に多少オーバーな表現もした。当時は自分のことを「名古屋ライター」、「名古屋めしライター」と思っていた。

今は「名古屋人はこうだ!」という決めつけはいかがなものかとさえ思う。「名古屋ライター」、「名古屋めしライター」から、もう卒業したのだ。

私がめざすのは、「名古屋めしライター」でもなければ、「名古屋ライター」でもないのだ。住んでいるところは名古屋だが、全国でも通用するフードライター。飲食店に例えるならな、名古屋で暖簾を下ろしているけど、その味を求めて全国から多くの客が訪れるような店。そんな存在に私はなりたい。