永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

うなぎ論。

f:id:nagoya-meshi:20201218201251j:plain

浜松へ出張。ってことで、せっかく浜松に来たんだから、うなぎが食べたくなって、浜松駅近くの店へ飛び込んだ。地元の人からすれば、もっと美味しい店があると思われるかもしれない。しかし、うなぎが食べたいという気持ちと空腹に負けてしまい、店を探すことすらしなかった。

注文したのは、うなぎを一尾分使ったうな重。お重の蓋を開けて、ご飯の上に敷き詰められたうなぎを見ると心が躍る。「これ!これっ!」と、コーフン気味に箸を入れた。すると、サッとうなぎの身が切れた。

そういえば、浜松は関東風の店と関西風の店が混在するボーダー地点であり、この店は蒸してから焼く関東風だったのだ。名古屋は蒸さずに焼く“地焼き”。ここまでは関西と同じだが、たまり醤油を使ったコクのあるタレに何度も浸けながら焼くので、関西よりも味が濃い。

蒸してからこのタレで焼いてしまうと、うなぎそのものの味が負けてしまう。地焼きだからこそ、濃厚なタレがうなぎの野趣溢れる味を引き出しているのだ。

と、いうことで、私は子供の頃から地焼きのうなぎの味に慣れてしまっている。うなぎといえば、パリッとした皮とふんわりとした身のイメージしかない。それで何の前触れもなく、関東風のうなぎが出てきたので思わず面食らってしまったのだ。

まぁ、関東風も悪くはない。何のリサーチもせずに入った店だったが、十分美味しかった。ただ、疑問に思うことがある。蒸すので、うなぎの品質はわからなくなってしまうのではないだろうか。

その点、地焼きのうなぎの場合、うなぎの品質に委ねている部分が大きい。うなぎそのものが美味しいから、丼やお重が成立するのである。

うなぎの美味しさは、皮と身の間にある脂だと私は思う。本当に美味しいうなぎは、その脂の口溶けがマグロのトロのように繊細で上品なのだ。関東風のうなぎでも味わうことができるが、地焼きの方がより堪能できる。

勘違いしてほしくはないのだが、関東風のうなぎをディスっているわけではない。その美味しさ、というか、何をもって「美味しいうなぎ」と評価できるのだろうか。食感?焼き加減?うなぎの身の厚み?それが私にはどうもわからないのである。誰か教えてほしい。

関東風と関西風、そして、名古屋のうなぎ。私の中では一つの結論に達している。いずれも、一様にうな丼やうな重と呼ばれるが、それぞれ似て非なるものである、と。