永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

神広報。

いよいよ、今日から仕事。

お正月休みをのんびりと過ごしたおかげで、体力も気力も十分。昨日のブログでも触れたが、今年の初仕事の現場はホテル。

東京では、昨年開催されるはずだったオリンピックに合わせて、ホテルの開業ラッシュが続いているらしい。名古屋では2005年の愛知万博の前に多くのホテルがオープンした。

その中の一つで金山にあるホテルの広報担当は素晴らしかった。石ノ森章太郎『HOTEL』の主人公、赤川一平や映画『マスカレードホテル』で長澤まさみが演じた山岸尚美のように決して「NO』とは言わなかった。

ホテル内のレストランで撮影があったある日、超望遠レンズをつけたカメラと三脚を持ったカメラマンがホテルの廊下を歩いていた。部屋や施設を撮影するなら広角レンズが必要なのに、バズーカ砲のような超望遠レンズで何を撮るというのか。広報担当に聞いてみると、

「『ホテルの最上階から、栄のテレビ塔を撮りたい』というお話でした」とのこと。いやいや、そのオファーはホテルに何のメリットがあるというのか。そんなの断ればいいではないか。そう私が言うと、

「いや、何かあったときに当ホテルを思い出していただければ」と苦笑していた。

また、私の先輩カメラマンからはこんな話も聞いた。その先輩は、ある雑誌のホテルランキング特集を担当した。ランキングは、編集部が定めた項目を実際にホテルに泊まってチェックするという。項目は多岐にわたり、

「ベッドを引っ剥がして埃やゴミの有無を確認したり、バスルームの排水溝も髪の毛が残っていないかチェックした」と、先輩。

ホテルランキング特集が掲載されると、編集部には抗議の電話が殺到する。そりゃそうだ。ホテルからすれば、営業妨害のようなものだから。ちなみに、私がときどき仕事をさせていただく『おとなの週末』もランキングの下位になった飲食チェーンから裁判を起こされている。雑誌の影響力は高いのだ。

その、金山にあるホテルは、開業したばかりというのに下位になってしまったという。ところが、編集部にかかってきた電話は抗議ではなかった。

「この度は当ホテルにご宿泊いただき、ありがとうございました。今回は残念な結果になりましたが、次回は上位に入れるよう、従業員一同頑張りますので、いつでもお越しくださいませ」というものだった。

その話を聞いた私は、これぞホテルのサービスに対する姿勢だと感動した。同時に、誰かからオススメのホテルを尋ねられたら、このホテルを勧めようと思った。取材してから15年近く経っているが、あの広報担当は出世しているに違いない。