永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

単行本の「帯」のコピー。

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あるご縁から、単行本の「帯」のコピーを書かせていただくことになった。その著者は、ある飲食店の店主。自身の一代記を自費出版するらしい。

今、振り返っても、とても不思議な縁だった。名古屋の都心にあった店を取材したのは、10年以上前。1回こっきりだった。ところが、5年ほど経ってから、三河の某市で再会した。たしか町おこしのグループの会合に私が飛び入り参加したときだったと思う。

聞いてみると、三河の某市で店をやっているという。さらに月日が流れ、昨年に店を取材させていただいた。ちょうど店のHPを作るとかで広告撮影の仕事もいただいた。そのときに本を出版するという話は聞いていた。

「撮影した写真はご自由にお使いください」とは伝えたが、まさか一介の地方ライターにすぎない私が「帯」のコピーを書くという大役をいただくとは思わなかった。

「本当に私なんぞでイイんですか!?」と、何度も念を押した上で引き受けさせていただいた。

「帯」のコピーを書くには、本を読まねばならない。この三連休の間にのんびりと読もうと思っていた。しかし、読みはじめると止まらなくなり、一気に読んでしまった。

その店主は、テレビなどのメディアに出るような有名人ではない。店も三河では知られているかもしれないが、おそらく名古屋で知る者は少ない。いわば、彼は名もなき店の主人だろう。

しかし、原稿には彼の生きざまが包み隠すことなく書き綴られていた。彼は私よりもひと回り以上も歳が離れているが、同じ個人事業主であることから、共感できる部分や学ぶ部分も多々あった。

彼の店には、よそにはないオリジナルの名物メニューがあるわけではない。同じジャンルの店であれば、彼の店がある三河のみならず日本全国どこでも食べられるものだ。彼はそこに唯一無二の味を求めている。

それは、オリジナルのメニューをイチから作ることよりも難しいかもしれない。正しい答えがない上に真新しさもないからメディアに注目されない。でも、彼は言う。

「情報が料理を作るわけではない。人が作るのだ。私の料理は私しか作れない」と。

オノレの信じた道を愚直に追求している。すごくカッコイイ。私もどこにでもいる地方のカメラマンであり、ライターである。でも、いつかは私にしか撮れない写真、私にしか書けない記事で勝負したい。

N藤さん、ありがとうございました!

 

※トップの画像は拙著『大名古屋大観光』の「帯」。一見、都築響一さんにお願いしたっぽく思えるが、実は違う(笑)。