永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ひとり飯のススメ。(2)

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わが家では揚げ物をやらない。準備も後片付けも面倒だからだろう。揚げ物は数ヶ月に1度、次男の好物の唐揚げを作るくらい。とんかつやコロッケは作るものではなく、買うものなのである。まぁ、スーパーのお惣菜の味はそこそこにしても、揚げ物は家よりも店で食べた方が絶対に美味しいと思う。

家でやらないこともあり、揚げ物が無性に食べたくなるときがある。年を取るとともに天ぷらやとんかつが食べたいという欲求は少なくなったものの、エビフライとなると話は別だ。何を隠そう、私も名古屋人なのである(笑)。

実は、美味しいエビフライを食べさせてくれるお気に入りの店がある。このブログにもたびたび登場する名古屋市緑区『花ごころ 緑苑』がソレだ。一昨日の夜、幸田町へ行った帰りに立ち寄らせていただいた。三河方面で仕事があるときにはほぼ必ず行く。

ここはもともと取材が縁となって行くようになった。カウンターに並ぶおばんざいや女将が自ら市場へ足を運んで仕入れる魚介を使った煮魚や焼き魚の御膳もある。でも、私はいつも「エビフライ膳」(1700円)を選択してしまう。

注文した直後に、「あぁ、またエビフライを頼んでしまった……」と後悔することもある。でも、エビフライ膳が目の前に運ばれると、そんな気持ちは吹き飛んでしまう。さらに、自家製のタルタルソースに浸けたエビフライを頬張ると、「これっ、これっ!」と心が踊りまくり。やはり注文してよかったと心の底から思う。

ここまで人を虜にする『緑苑』のエビフライの魅力とはいったい何なのか。本能のまま貪り食っていたから、あまり考えたことがなかったわ(笑)。フードライターとして冷静に分析してみようと思う。

まずはメインのエビフライ。名古屋人は大きさにこだわる(笑)。私も例外ではないし、名古屋人のハートを鷲掴みにしている店もある。しかし、あまりにも大きいと大味になるのは否めない。しかし、ここのエビフライは大きいのに味がしっかりしている。ほのかな甘みも感じるのだ。

あと、エビフライにおいては衣の存在も重要。パン粉のきめの細かさも店によってさまざまだし、衣の厚みもいろいろある。私は粗挽きのパン粉は好きではない。衣は薄すぎても、厚すぎてもダメ。

口の中で衣のサクサク感とエビのプリプリ感、そしてタルタルソースの味が一つになったとき、エビの旨味を引き出すくらいの厚み。って、わかり辛ぇわ(笑)。要するに、『緑苑』のエビフライはそのように仕上がっているのだ。

エビフライ御膳には、塩でいただく手作りの豆腐やおばんざい、サラダ、デザートも付く。これらも本当に旨い。実にていねいに作られていることが伝わってくる。あと、これも重要な話。ご飯と味噌汁、漬物に至るまで手を抜いていないのだ。

いつ行ってもご飯は粒が立っているし、味噌汁も名古屋らしく豆味噌を使ったコクのある赤だし。これらは家でも食べられるが、まったく違うのである。外での食事の楽しみはそこにある。また、料理と、それを作った人と向かい合うことができるのも“ひとり飯“の魅力だ。若女将の嘉美さん、ご馳走様でした。ありがとうございました。