永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ひとり飯のススメ。(6)

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少し間が空いたが、「ひとり飯のススメ。」を再開する。今回は、国民食であるカレー。

全日本カレー工業協同組合、及び日本缶詰びん詰レトルト食品協会が公表している統計によると、日本人は年間79杯もカレーを食べているという。と、いうことは週に1回以上。

このデータは家庭と外食を合わせたデータだと思うが、わが家ではだいたい月に2回くらい。女房が朝、出勤前にカレーを作っておいて、夜にまた温めて食べるというパターン。2日分仕込むので、翌日の夕食もまたカレーというのもパターン。

ところで読者の皆様は、不意にカレーが食べたくなったとき、どこへ食べに行きますか?

都心部の近くに住んでいたら、いろんな選択肢があると思う。それこそ、インドカレーやスパイスカレーの美味しい店はいくらでもあるんだから。郊外在住の私は電車や車で出かけねばならなくなるのでそれは無理だ。

それに、カレーを食べたいという欲求に限っては、1分1秒でも早く満たしたい。って、それは私だけか(笑)。だから、愛知県下であればどの町にあると言っても過言ではない『ココイチ』一択となる。いや、カレーが食べたいというよりも、『ココイチ』のカレーが食べたいんだよな、たぶん。

私が『ココイチ』でいつも注文するのは、「ロースカツカレー」。昔はフライドチキンやチキンカツ、チーズなどのカレーも食べたが、ここ何年かはこれ以外、ほとんど頼んだことがない。

たまにトッピングをテンコ盛りにして食べている客を見かけるが、あれはよくない。トッピングは2つまで、というのが私の持論だ。それは、カレーに限らず、味噌汁も同じ。

2種類以上の具材が入った味噌汁は味がぼやけてしまうというか、あまり美味しいと思わない。えっ!?具沢山の豚汁はどうかって?具沢山なのが豚汁だと思っているから問題ない(笑)。つまり、私は自分勝手なのである(笑)。

『ココイチ』の「ロースカツカレー」に話を戻そう。そりゃメチャクチャ旨いかというと、じっくりと煮込んだ洋食店のカレーの方が旨いに決まっている。でも、ときどき無性に食べたくなるのはなぜだろう。しかも、家で同じ味を再現しようと思ってもできない。

以前、『ココイチ』を取材したときに、広報の担当者からこんな話を聞いた。

www.hotpepper.jp

「カレー専門店を開店させるにあたって、創業者は東京の人気カレー店を視察したそうです。ところが、どのお店も個性が際立っていて、確かにおいしかったのですが、毎日食べられるかといえば難しい。カレーそのものが個性的な料理だと思うのですが、その個性を強調せずに、毎日食べても飽きない味を追求しました。特徴がない、とも言えますが(笑)、特徴がないからこそトッピングがいかされるんです」

そう、個性がないのである。いや、創業当時は個性のなさを追求していたのかもしれない。40年以上経った今では、とろみが少なくて、やや辛めのあの味が『ココイチ』のカレーとして人々に認識されていると思う。

私が思うには、あのとろみの少なさがトッピングしたときに一体感を生み出すのだ。それと、ロースカツ。これも、とんかつ専門店で食べた方が絶対に美味しい。っていうか、『ココイチ』のロースカツは思いっきり冷凍食品だし。

私が着目したのは、あの薄さ。とんかつ専門店がカツカレーを作ると、どうしてもルーよりもとんかつに力を入れてしまう。結果、分厚くなってしまい、カレーとのマッチングが今ひとつ。あのロースカツは、カツカレーのために作られたものだろう。

カツを細かく刻んでいるのも、カツではなくカツカレーを食べさせたいという意図が伝わる。とんかつ専門店のカツカレーはここまで包丁を入れない。やはり、メインはとんかつなのだ。

5年ほど前に、『ココイチ』のロースカツ、それも賞味期限切れの産廃品が産廃業者によってスーパーへ横流しされた事件があった。飛ぶように売れていたとテレビのニュースが報じていた。賞味期限切れではなく、横流しでもない正規品であれば、間違いなく私も買うと思う。

ずいぶんと『ココイチ』を持ち上げてしまったが、私は残念でならないのである。『うま屋』のチャーハンと同様に、『ココイチ』の「ロースカツカレー」を超えるカレーがないことが。カレーだけ、カツだけであれば『ココイチ』よりも美味しい店はあると思うが。

多種多様な飲食店が軒を連ねる今だからこそ、美味しいカツカレーだけで勝負する店があってもおかしくはないと思うのだが。外食におけるカレーにもまだまだ可能性がある。『ココイチ』の一人勝ちを許すな!