永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

津のうなぎ。

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昨日は15時半に名古屋市内で取材を終えて、一旦帰宅。着替えてから三重県津市へと車を走らせた。明日、朝イチから取材なので、前泊するためである。

津には「津ぎょうざ」や『東洋軒』の「ブラックカレー」、『千寿』の「天むす」など名物や名店が多々ある。でも、私の中で津といえば、うなぎが思い浮かぶ。

津市内には鰻屋が数多くあり、しかも、安い。名古屋よりも500円は確実に安い。なぜ、津には鰻屋が多いのか。調べてみたところ、愛知県と同様に海に面していて、大きな川もあることから養鰻業が盛んだったらしい。戦前から戦後にかけてが最盛期だったが、九州で養鰻業がはじまると競争に勝てなくなり、伊勢湾台風が決定打となって衰退していったという。

これは三河一色うなぎが有名な愛知県西尾市一色町で聞いた話だが、養鰻業が盛んな町は、「うなぎは買うものではなく、もらうもの」という考えが根底にあるそうだ。今でこそうなぎは高級品になったため、もらうことは少なくなっただろうが、「昔はうなぎを買ったことがない」という声も聞いた。

鰻屋の数が多いのは、養鰻業が衰退しても、日常的にうなぎを食べる習慣があるためである。値段が安いのは、悪い言い方をすれば、津の人々はうなぎの価値が昔と変わっていないのだろう(笑)。

ってことで、私は津に訪れるたびにうなぎ屋へ足を運んでいる。『うなふじ』や『新玉亭』など有名店はほとんど行った。中でも私の好みだったのは、津市大門にある『はし家』。これまで3回ほど行ったことがあり、今回もここに決めた。

到着したのは19時半頃。以前訪れたときは、週末だったこともあって2階の座敷へ案内されたが、今回は待つこともなく、すんなりと1階のテーブル席で食べることができた。

注文したのは、蒲焼が3切れのる「中うなぎ丼」(2090円)。3切れとはいえ、丼が埋まるほどのボリューム。五十路のおっさんにはちょうど良い。ご飯もぎっしりと入っていて、他店の大盛りくらいはある。以前、知らずに大盛りを注文したことがあり、マンガ飯レベルのデカ盛りが出てきた(笑)。その教訓を生かして、今回は普通盛。

さて、いよいよ実食。うん、うなぎはフワフワの食感。皮もやわらかくて美味しい。タレも甘すぎず、辛すぎず、ちょうど良い塩梅。ただ、少し残念だったのは、タレが多くかかりすぎていたこと。これも好みの問題だが、後半は飽きてしまった。注文時にタレ少なめを伝えればよかったと後悔。それと、ご飯の炊き方。丼ものはややかために炊いたほうが美味しい。ご飯そのものは美味しかっただけに残念である。

津のうなぎを食べるたびに思うことは、どの店も全体的にワイルドというか、野趣溢れる味わいということ。名古屋の方が洗練されているというか。私の子供の頃に食べたうなぎがこんな感じだった。それだけ津の人々にとってうなぎは身近なものなのだろう。

さて、明日は朝イチで取材。帰宅後も原稿が待ち構えている。うなぎを食べてスタミナもつけたことだし、頑張ろう。