永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

アーモンドグリコ。

f:id:nagoya-meshi:20210328221259j:plain

私が本格的にグルメ取材を始めた2002〜2003年頃、名古屋には専門店が少なかった。寿司屋の看板を掲げていても、天ぷらやうなぎも食べられる、みたいな。そんな店が旨いはずがない。それこそ、写真を撮り、文章を書き、講演会やテレビで喋る私と同じである(笑)。

なぜ、専門店が少なかったのか。理由はとても簡単明瞭で、ニーズが少なかったのだ。つまり、寿司屋で天ぷらやうなぎを食べたいとリクエストする客が多かったのである。さすがに20年近くたった今では少なくなったものの、食べたいものが何でも揃うファミレスや居酒屋のような店が人気だったのだ。

無茶なリクエストをしてしまうのは、「せっかくお金を払うのでいろいろなものを食べたい」という名古屋人気質が関係していると思う。いや、まったくもって恥ずかしい。しかし、よーく考えてみれば、女性が好みがちな「多くの種類のものを少しずつ食べたい」というのはどうか。なぜかそれは恥ずかしくない。

f:id:nagoya-meshi:20210328212833j:plain

↑写真は、私がときどきブログで紹介する『長命うどん』の「う中」である。一つの丼の中にうどんと中華そばが入る、一粒で二度美味しいアーモンドグリコ的なメニューである。これも、恥ずかしさは感じない。むしろ、誇りに思うほどである。

他にも名古屋には二つの丼をくっつけた「∞」のカタチをした、通称“ブラジャー丼”という丼ものがある。要するに、これも「う中」と同様に異なる2種類の丼ものが一度に味わえる。名前はイマイチだが、よく思いついたものだと思う。

これらは名古屋にしかないと思っていた。が、見つけてしまったのである。それも岐阜駅近くの喫茶店『敷島珈琲店』で。

www.shikishimacoffee.com

f:id:nagoya-meshi:20210328221117j:plain

それが「モリライス」なる熱々の鉄板で食すメニュー。見ての通り、イタリアンスパとカレーが同時に楽しめる一品である。インスタで見つけてから、どうしても食べたくなり岐阜まで車を走らせた。

カレーは生姜の風味がしっかりときいていて、じんわりと身体が熱くなる。具材はほとんど溶けてしまっている玉ネギとじっくりと煮込まれていてやわらかい豚肉。家庭の味でもなければ、レストランの欧風カレーでもない。かなり個性的でクセになる味わいだった。

一方、イタリアンスパはいたってフツー。強いて言うならば、ケチャップがウェットではなくドライという点くらいか。ウェットだとカレーと合わせると重たくなるし、何よりもカレーが個性的なので、イタスパはフツーで良いのだ。

カレーとイタスパの下には卵が敷かれている。それも全体をまとめる“つなぎ”的な役割を十分果たしている。

f:id:nagoya-meshi:20210328225725j:plain

ただ、読めなかったのは、この量。腹ペコだったのでペロリとイケると思いきや、食べても食べても減っていかない。しかも、サラダも喫茶店にありがちなミニサラダではなく、ご飯茶碗一杯分よりも多い。ウンウンと唸りつつ、何とか完食した。

そういえば、長崎のトルコライスや金沢のハントンライス、福井のボルガライスなどアーモンドグリコ的なメニューは名古屋に限ったものではない。共通しているのは、これらはどちらかと言うと、女性よりも男性に好まれる点ではないか。とくに食べ盛りの男子。彼らからすれば、「男のロマン」と言ってもよいだろう。