永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

それ、美味しいの?

f:id:nagoya-meshi:20210408220614j:plain

編集プロダクションで働いていた頃、全仕事の6割は風俗の取材だった。当時はイメクラの全盛期。とくに関西での人気は凄まじく、頻繁に取材へ行っていた。

あ、イメクラをご存知のない方もいらっしゃるかもしれないので解説しよう。イメクラとはイメージクラブの略で、教室やオフィス、病院を模した個室で性的なサービスを受けるというもの。女性もそれぞれのシチュエーションに合わせたコスチュームを着用する。

私の友人にもイメクラ好きのヤツがいた。ソイツは作文や読書感想文を書かせてもヘタクソなくせに、イメクラで遊ぶとなるとジェームス三木ばりの脚本を書くらしい(笑)。私に言わせりゃ、なんでカネを払ってまでコントをしなければならないのかがさーっぱり解らない(笑)。

いや、こんな話をしたかったのではない。ある週刊誌のモノクログラビアでユニークなイメクラを特集したことがあった。

今でもハッキリ覚えているのが、京都の店での出来事。女の子のお尻をスイカに見立てて、目隠しをした客がビニールのバットで「スイカ割り」をするというもの。ご丁寧に、お店の人が絵の具でお尻にスイカの模様まで書いてくれた。その写真がグラビアの扉(1ページ目)を飾った。

その反響は凄まじく、予約や問い合わせの電話が殺到したという。何度も言うが、カネを払ってまでコント、それもスイカ割りをしたいのかがさーっぱり解らない(笑)。しかし、風俗、それもイメクラの世界では、良くも悪くも「イメクラは雑誌に載ってナンボ」という図式が出来上がってしまった。

風俗店から「こんなの考えたんスけど」という売り込みも頻繁にあった。客の方ではなく、マスコミ受けすることしか考えていないのは明らかだった。メディアというのは天の邪鬼なところがあって、取材される側からグイグイ来られると引いてしまう。そんな売り込みに辟易していた。

ここからは怒られることを覚悟して書く。雑誌に載せてほしい風俗店とインスタ映えを狙う店とどこが違うのだろうか。比較することではないかもしれないし、そもそも同列に扱うことでもないかもしれない。でも、私には同じように見える。

料理の写真を何万枚撮ってきた私からすれば、美味しいものは何もしなくても美味しそうに撮れるのである。本当に美味しい料理は、インスタ映えなんぞを狙わなくても、そこにあるだけで強烈なエネルギーやパワーを放っているのだ。料理は作り手の分身でもあるからである。

インスタ映え。私にはさーっぱり解らない。それ、美味しいの?