永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

きしめんの逆襲。

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東京や大阪にあって、名古屋にはないもの。それはなーんだ?

答えは、そばやうどんなど麺類の立ち食い店。東京や大阪へ行くたびに羨ましいと思う。しかも、そこそこ旨いし。

何よりも、街を歩いているだけで東京=そば、大阪=うどんという具合に文化として根付いているのを感じるのだ。それが何とも羨ましい。

名古屋には、名古屋駅のホーム『住よし』と名古屋駅地下街『大須きしめん』くらいしかない。それでも『住よし』の存在は大きい。県外から訪れた人々に名古屋のご当地面がきしめんであることを強く印象づけている。

が、しかし、このブログで何度も書いているように、『住よし』のきしめんは、例えるならばファストフードのハンバーガーなのである。アメリカンダイナーや専門店がこだわり抜いて作ったグルメバーガーと同じハンバーガーとはやはり違う。

なぜ、名古屋には立ち食いのきしめん店がないのか?と、いうよりは、市内できしめんの名店といわれる麺類食堂が立ち食い店を出店したら絶対に繁盛するのではないか。

私は長いことそう思っていたが、その理由がわかった。できなかったのである。いや、資金面とかそういう話ではない。

『住よし』の「かけきしめん」は一杯360円。きしめんが評判の店のほとんどは手打ちによる自家製麺を使用している。人件費や材料費を考えると、この値段で提供するのは無理なのだ。

だからと言って、『住よし』と同様に業務用の冷凍麺を使うわけにはいかない。手打ち麺と比べて明らかに美味しくないものを人様に食べさせることは職人としてのプライドが許さなかったのだ。

逆に言えば、手打ち麺と変わらないクオリティの麺を製麺機で作ることができたら、きしめんの立ち食い店は現実のものとなる。名古屋のみならず、全国のうどん店やそば店は店主の高齢化や後継者不足という問題を抱えている。

それだけに製麺機の性能は向上しているだろうし、冷凍技術も日進月歩である。必ず近い将来にきしめんの立ち食い店が誕生するだろう。平成時代に日の目を見なかったきしめんの逆襲が令和の時代にはじまるのだ。