永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

返信。3

f:id:nagoya-meshi:20210601000225j:plain

昨日に引き続き、「とある元ライター」様から頂戴したコメントの返信。

今日はコメント後半部分の名古屋めしについて書かせていただく。

2001年に名古屋めしというコトバが誕生してから、ずっと名古屋めしを取材してきた。

ご存知だと思うが、名古屋めしというコトバは、名古屋のレストランバー『Zetton』の稲本健一社長が名付け親である。『Zetton』が東京に初出店した際、看板メニューだった味噌串かつや石焼ひつまぶしをまとめて「名古屋めし」と呼んだのだ。

東京からブームが起こり、従来「名古屋名物」といわれていたきしめんや味噌煮込みうどん。味噌かつ、手羽先、ひつまぶしの総称として使われるようになった。名古屋めしのブームは、名古屋の片田舎に住む地方ライターの私にとっては千載一遇のチャンスだった。

「とある元ライター」様のおっしゃる通り、名古屋に来られた方や興味を持っている方にその魅力を伝えたかった。名古屋めしを名古屋観光の起爆剤として地元経済の活性化に繋がればという思いで取材をして、撮影をして、文章を書いてきた。

とくに従来の名古屋めしをさらにアレンジした「進化系名古屋めし」、例えば、牛や豚、鶏などを使ったひつまぶしや台湾ラーメン以外の台湾○○(カレーなど)に興味を持ち、グルメ情報誌『おとなの週末』で連載を持たせていただくまでになった。「名古屋めしをメインに生計を立てていた時期もあった。

ただ、『おとなの週末』は、10数年間ライター、カメラマンとして携わってきた。進化系名古屋めしの連載はそのごく一部にすぎず、和食やフレンチ、イタリアンの人気店を取材する機会の方が多かった。

グルメ取材を続ける中で、当初は料理そのもの、つまり食材や味付けなどに軸を置いていたが、次第に料理を作った人にシフトしていった。料理は作る人がこれまでどんな人生を歩んできたのか。料理は料理人の生き様そのものだと気がついた。

年齢を重ねてきたこともあり、料理を作った人を軸に取材するようになってから、名古屋めしへの興味を失っていった。あ、誤解してほしくはないが、きしめんや味噌煮込み、味噌かつ、ひつまぶしなどそれぞれの料理やそれらを作る人にはすごく興味がある。うーん、わかりますか?

以前、ブログにも書いたように、冷凍食品のとんかつに「つけてみそかけてみそ」をかけたら味噌かつになり、名古屋めしとしてカテゴライズされる。一方、厳選した豚肉をはじめ、衣や油にもこだわったとんかつに自家製のこれまたこだわり抜いた味噌だれをかけた味噌かつもまた名古屋めしである。

これ、むちゃくちゃ乱暴な話ではないかと。フードライターである私は、名古屋めしの魅力ではなく、美味しいとんかつや美味しいきしめん、美味しい味噌煮込みうどん、美味しいひつまぶしを紹介するのが仕事なのではないかと。

また、来年の今頃には消えてなくなるような店よりも、これから10年、50年、100年と続いていく店を取材したい。そこで料理を作る人の考えや生き様を伝えたい。そのためには名古屋めしというコトバは軽すぎるのだ。だから、積極的には使いたくない。

正直、名古屋めしというコトバに対する思いは私自身、まだまだ整理できていない部分がある。これからもブログに書くことで整理をしていこうと思っている。

「とある元ライター」様のおっしゃる

そもそも名古屋めしっていうキーワードに限っていうと、ネーミング自体が安易だったという点を省みてほしいのです。愛知県を安易に名古屋で括るのはむしろ誤解を与えるとは思いませんか? 疑問を呈するならまずはそこからですよ。愛知県には名古屋地域に限らず三河や尾張にも魅力的な食文化があるのに、それらをいっしょくたに名古屋めしと括る方が違和感あります。

 という部分にはとても共感できる。とくに尾張(名古屋)と三河はもともと別の国だったわけで、それぞれ独自の文化を醸成しているのは間違いない。これは私にとって重要なテーマになるかもしれない。

「とある元ライター」様、拙ブログに対する率直なご感想や貴重なご意見をありがとうございました。おかげで自分自身のことや名古屋めしについてより深く考えることができました。