永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

儀式。

年をとったせいか、よく昔のことを思い出す。

フリーになる前の23歳から25歳の半ばまで働いていた編集プロダクションでは、本当に濃密な時間を過ごしたと思っている。

取材対象は、風俗嬢やキャバ嬢、ホスト、ヤクザ……と、『闇金ウシジマくん』に出てくるような、ちょっとワケありの人ばかり。

取材で何度も顔を合わせているうちに仲良くなり、プライベートで写真を撮ってあげた風俗の女の子もいた。

当時、彼女たちは私よりも年上だったから、50代の半ばから後半になる。今頃、どうしているんだろう。意外とフツーに結婚して、お母さんになっているかもしれない。

その中でも忘れられない人がいる。

彼女はSMの女王様。クラブに在籍せず、フリーで活動していた。なぜか私とはウマが合い、数えきれないほど取材をした。

取材の場所は、東区赤塚にあるマンションの一室。そこが彼女の自宅兼仕事場だった。取材に訪れると、いつも50代くらいの中年男性が白ブリーフ1枚で部屋の掃除をしていた。

これも「プレイ」の一環なのである。パンイチで部屋を掃除する中年男性は、自らお金を払って彼女のためにご奉仕しているのである。

ある日、同じ編プロで働く後輩のM瀬君が

「ナガヤさん、実は今日、○○さんの取材へ行くんですよ。何か注意することってありますか?」と、聞いてきた。

○○さんというのは、その女王様のことであり、私が彼女のことを面白おかしく話すので、気の小さいM瀬君は完全にビビっていたのだ。そこで私はちょっとイタズラというか、ドッキリを仕掛けることにした。

「○○さんを取材するには、まず、“儀式”を受けなきゃ。玄関先でチンチンを彼女にチェックしてもらって、OKが出れば部屋に上がれるから」と、私。

「えーーーっ!?そんなコト、やらなきゃならないんですか?マジですかぁ!」と、M瀬君。

私とM瀬君のこのやりとりを社長も聞いていて、

「M瀬君、○○さんとこ行くんだ。儀式、オレもヤッたよ」と、ナイスアシスト(笑)。

「行ってきます……」と、M瀬君は消え入るような声で○○さんの自宅兼仕事場へ向かった。

M瀬君が事務所を出て1時間半ほど経ってから、私の携帯電話が鳴った。ディスプレイには○○さんの名前が表示されていた。

「ちょっとー!もー!ナガヤさん!何なの、アレは(笑)」と、彼女は大爆笑。どうやら、M瀬君は本当にチン見せの儀式をヤッたようだ(笑)。

事務所に戻ってきたM瀬君は、心なしかゲッソリとしていた。

「玄関先でズボンを下ろしてチンチンを出したら、○○さんは『ちょっ、ちょっと!ナニやってんのー!』って。ナガヤさんにこう言われてって説明したら大爆笑でした」と、M瀬君。

まぁ、場が和んでよかったではないか(笑)。

M瀬君とは、フリーになってから1度も会っていないが、犯罪ジャーナリストとして活躍しているらしい。彼にとって、チン見せの儀式は間違いなく黒歴史だろう。