永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ラーメン店の店主とラーメン評論家の件。

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何やら、ラーメン店の店主ラーメン評論家の界隈が騒がしい。

評論家さんは、私なんぞ足元にも及ばない高名な方。ご本人は、フードジャーナリストと名乗ってらっしゃる。常々、その肩書きは斬新と思っていた。

ジャーナリストであるならば、飲食業界の悪しき慣習や、ブラックな企業体質、飲食店とグルメブロガーやインスタグラマーとの癒着など(実際にそれらがあるかどうかは私にはわからないが)について鋭いメスを入れてほしいところだ。

が、やっていることといえば、料理を取材して、写真を撮って、文章を書くということ。私とほとんど変わらない。だからこそ、今回の騒動で擁護できる部分があるのかもしれないと思った。

で、双方の主張をじっくりと読んだのだが、これはどう考えても、評論家さんの分が悪い。以下に引用する。

梅澤さんは後から来て、もちろん仕事中なんでノンアル。
僕は泥酔。って図式ですw
不思議というのは、会いたいというから来たので、当然に普通の写真を撮っていいと思ったというか、梅澤さんを撮らないと鍋料理の宣伝もできない、ていうかその前段階で、御社のお店で飲み会だったら普通、店主の写真って撮りません?

そもそも、泥酔した状態で仕事がらみの人と会うというのが私には考えられない。それがたとえ会食であったとしても。しかも、今回の騒動に対する意見も酒を飲みながら書いているし。

シラフで会食がスタートして、飲みすぎて泥酔するというのもアウトだな。よほどお互いに気心が知れた間柄であれば、ギリギリ許されるかもしれないが、この場合、初対面。

評論家さんは仕事の関係者との飲み会と思っていたのだろう。いや、でも、

会いたいというから来たので、当然に普通の写真を撮っていいと思ったというか、梅澤さんを撮らないと鍋料理の宣伝もできない、

と、ある。「宣伝」というコトバをジャーナリストが使うことに引っかかるが、評論家さんの中では、仕事半分、遊び半分だったのだろう。この仕事をしていると、そういったことはよくある。それは私も認める。

しかし、店主はというと、この会食を完全に仕事の一環として捉えていたに違いない。そうでなければ、ラーメン評論家と会う理由がない。今回のトラブルは、その温度差によって生まれたのだと思う。

と、なると、キーパーソンは、双方を引き合わせた「業者さん」ということになる。業者さんがこの会食をどのように双方に伝えていたのかが気になる。

店主によると、

「付き合いのある材料業者さんが、評論家のH氏を紹介してくれるというので、

と、ある。一方、評論家さんは、

ラーメン関係では有名なある業者さんがいて、その人から「梅澤さんが会いたいって言ってるから、来てください!」ってFacebookメッセージで言われたんですね。

「紹介してくれる」と「会いたい」。かなり、ニュアンスが違う。アイドルグループ出身の美人店主から「会いたい」と言われれば、泥酔して傍若無人に振舞っても許されると思ったのかもしれない。「オレが飲食業界のことを教えてやる」といった具合に。

蒸し返すようで申し訳ないが、

梅澤さんを撮らないと鍋料理の宣伝もできない、

ここで「宣伝」と書いているということは、自身が影響力を持つ人間であることをご本人も自覚していると思う。このスタンスも大問題である。そもそも、評論家やジャーナリストは、そんなにも偉い存在なのか。

私の周りに評論家はいないが、ジャーナリストは知り合いに何人かいる。皆、とても謙虚で、自分と取材対象者や情報提供者の間にきちんと線を引いていて、適度な距離感でつき合っている。彼らのスタンスはとても参考になる。

さらに、評論家さんは、その後、ジャーナリストとはあるまじき行為に出る。「超モメてたラーメン店」、「ヤバい会社だけど、地元の某業者にお金払わなくて」、「さらにヤバい人が加わったりして」と、自身のSNSに反社をイメージさせる投稿をしたのだ。

ジャーナリストであるならば、ウラを取るのは当たり前の話だ。まぁ、最近ではテレビにも出演する有名なジャーナリストがネットの出所がわからないようなデマを思いきり信じ込んでSNSで拡散させていることも多々あるが。

私は、私自身のことを評論家やジャーナリストとこれっぽっちも思っていない。便宜的にフードライターと名乗らせていただいているが、その店に訪れた、ただの客というのが正しい。食べて美味しいと思ったから、その店の居心地が良いと思ったから書く。もちろん、ときには、その逆もある。

こんなことは、誰にでもできるし、私に文章力がないのは私自身がいちばんよくわかっている。実際、Yahoo!に私が書いた記事が掲載されると、ボロカスに書かれるし(笑)。それに、グルメブロガーも星の数ほどいる。

私と彼らの違いは、文章や写真を掲載するメディアからお金をもらっているか否か。なぜ、私はお金がもらえるのかは知ったこっちゃない。私を使ってくれている編集者に聞いてくれ。

本来、飲食は楽しいことである。たとえ美味しくなくても、店主が無愛想でも、それはそれで笑い飛ばせばよいではないか。私の役割は、メディアを通じて飲食をより楽しいものにすることだと思っている。

 

※写真は、最近食べた愛知県江南市『食堂 和おん』の「中華そば」。当たり前ですが、本文とは一切関係ありません。