永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ブームと文化。

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今日は、名古屋駅構内のカフェでモーニングなどの撮影。

モーニングサービスという愛知県独自の喫茶文化が生まれたのは、昭和30年代前半の一宮市。その背景には、地場産業である繊維業の隆盛があった。

当時は景気が良く、繊維業を営む、いわゆる“はたやさん”たちは、商談や打ち合わせのために喫茶店を頻繁に利用していて、朝から来てくれる客にサービスとして、コーヒーにゆで卵とピーナツを付けたのがはじまりである。

文化というものは、その土地で暮らしている人達によって自然発生的に生まれるものである。モーニングの場合も、最初にゆで卵とピーナツを付けた店を他の店を模倣したと思うが、それ以前に、一宮のはたやさんたちは、喫茶店へ行くことが生活の中に入り込んでいたわけである。つまり、モーニングのニーズがあったのだ。

一方、「名古屋めし」と呼ばれる料理の大半は、天才的なセンスのある一人の料理人によって作られたものである。つまり、創作。それを他の店が模倣することで広がっていったのだ。

それはそれで面白いとは思うが、すごいのは、やはり最初に考えて、作り上げた人ということになる。もちろん、中には、オリジナルをじっくりと研究して、それ以上のものを作る人もいるだろうが、極めて稀だと思う。真似した方が手っ取り早いし。

とはいえ、ここまでネットが普及した情報過多の時代には、一時的なブームは起こっても、新しい文化は生まれないかもしれない。「名古屋めし」も20年近く前にブームがあった。全国的なブームはとっくに終わっているが、名古屋圏だけ今でも続いている。

ブームはいくら盛り上がっても、消費されたら消える運命にある。それを追いかけるライターやカメラマンも一蓮托生だ。願わくば、文化を守り、伝え、遺す役割をライター、カメラマンとして担ってみたい。それが私に課せられた使命ではないかと思っている。

モーニングを撮影しながら、ふと、そんなことを考えていた。