永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

おっさんたちの楽園(パラダイス)。

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まだ「名古屋めし」というコトバが生まれる前、あんかけスパの店に足を運ぶ客層の90%以上は中年のサラリーマンだった。

当時、私は「おっさんたちの楽園(パラダイス)」(笑)と題して記事を書いた。

あんかけスパを美味しそうに食べるおっさんたちを見てイメージしたのは、デパートのレストランの「お子様ランチ」を美味しそうに頬張る子供。

お子様ランチは、新幹線やスポーツカーの器にチキンライスやエビフライ、唐揚げ、ハンバーグ、ナポリタン、プリンなど子供が喜びそうなメニューが盛られている。私も子供の頃は見ただけでワクワクしていた。

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↑『コモ』外観。名古屋・栄の丸栄スカイル9階にある

それと同様に、あんかけスパもおっさんたちの喜びそうなものがギュッと詰まっている。今日、福田ちづるさんと食べに行ったあんかけスパの店『コモ』でそれを実感した。

「“シガツ”っていうのが、とにかく美味しいの!私、めちゃくちゃハマってる」と、彼女は私と会うたびにアツく語るのだ。「アレは私の中でナンバーワンかもしれない」とも。

『コモ』には20代の頃に行ったことがあり、『ヨコイ』や『そーれ』に比べてあんかけソースがマイルドなので、何となく物足りないというのが率直な感想だった。が、“シガツ”は食べたことがなかった。ちづるさんがあまりにも頻繁に「シガツゥゥゥッ!」と言うのでめちゃくちゃ気になっていた。

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↑店の前にあるサンプル。「シガツ」はど真ん中の目立つところに。人気の高さを物語っている

実は、年明け早々に丸栄スカイル9階にある『コモ』の前で待ち合わせをした。年末にあんかけスパの記事を書いて無性に食べたくなり、ちづるさんを誘ったのだ。

ところが、その日は水曜日。『コモ』の定休日だったのだ。フラれたこともあって、今日というこの日を待ち望んでいた。

12時40分頃にちづるさんと合流して店内に入ると、そこはまさにひと昔前のあんかけスパの店そのものだった。店内の90%以上は男性。しかも、50代以上がメイン。店内の照明は明るいはずなのに、暗く感じるのは、皆、スーツを着ているからだろう。

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↑「シガツ」。カレーで味付けされているので麺の色がほんのりと黄色い

注文したのは、もちろん「シガツ」。具材は、魚肉ソーセージとスクランブルエッグ、玉ねぎ、ピーマン。と、特別珍しいわけではない。しかし、ひと口食べて、巷のあんかけスパとまったく違うことがわかった。

スパゲッティの麺そのものにほんのりとカレーの味付けがされているのだ!本当にほんのりと。きっと、これ以上濃くても、あんかけソースとケンカするし、逆に薄くても物足りない絶妙なバランスなのだ。カレー味の麺とあんかけソースが混ざりあったとき、足し算ではなく掛け算になるのである。これを考えた人は間違いなく天才だ。

あんかけスパの店を始めようと思ったら、有名店の『ヨコイ』や『そーれ』の味をお手本とするのが正攻法。それは間違いない。しかし、『コモ』は独自路線を突き進んでいる。そこにも感動した。

カレーもあんかけスパも魚肉ソーセージもスクランブルエッグもおっさんは大好き。それらを1つにまとめ上げた「シガツ」には、おっさんの夢が詰まっているのだ。身勝手で個人的な願望をあえて述べさせていただくことをお許し願いたい。『コモ』にはインスタ世代は来てほしくない。これから先もずっと、おっさんたちの楽園(パラダイス)であってほしい。

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↑「カワイイ感じで♡」という私のリクエストにこんな表情(笑)。