永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

イイ店と都合のイイ店。

「イイ店」というのは、どんな店だろう。

美味しくて、雰囲気や居心地が良くて、お店の人の接客が良くて、そこそこお値打ちで……。と、いろいろな理由が挙げられる。あ、これらは客目線に立った場合ね。私がメディアで飲食店を紹介するときの立ち位置でもある。

ところが、メディアによっては、とくにテレビの場合はそれが「イイ店」とは限らない。番組の意図を理解し、協力してくれる店、こちらの無理を聞いてくれる、番組制作にとって「都合のイイ店」の場合もある。

私も取材先に無理を言うこともある。〆切の都合上、「取材は3日後にお願いします」とか主にスケジュールについてである。

テレビの場合、メディア用にメニューにないものを新たに作ってもらうことがある。一般人ではとても完食できないようなデカ盛りや激辛のメニューがそれだ。

番組を見た視聴者が店へ行っても、事前予約がなければ食べられないし、値段も高い。作るのに時間も手間もかかるから、あえてハードルを高くしているのだ。

もちろん、普段からデカ盛りや激辛のメニューを出している店もある。私もこれまで何度も取材した。が、毎月何軒かのペースで紹介できるほど軒数は多くない。そこでテレビの制作会社は考えたのだろう。なければ作ってしまえばよい、と。

だから、テレビにとって「イイ店」は、テレビにとって「都合のイイ店」となる。

さて、私の自宅から車で20分くらいの場所にテレビで頻繁に紹介されているラーメン店がある。半チャーハンのセットもあるので、美味しかったら「ニッポン“チャーラー”の旅」で紹介しようと思って行ってきた。

店は駅前とかではなく、車でしか行くことができないのでアクセスが良いとはいえない。店へ入ると、店内の壁に取材で訪れた芸能人のサインがズラリ。番組名と放映日が書かれた紙も壁一面に貼られていた。

メニューを見て驚いたのは値段。デフォルトの豚骨ラーメンが800円超え。スープやチャーシューに国産の黒豚やブランド豚を使っているわけでもない。具材はチャーシューとメンマ、ネギ。

他店であれば卓上にある紅ショウガやニンニクも有料のトッピングとなっている。セットの半チャーハンも300円超え。合計すると1200円近くになる。他のメニューを見ても、相場より100円〜150円は高い。

いや、高くても美味しければまったく問題ない。そう思って目の前に運ばれたラーメンを食す。…………。うん、いたってフツー。ただ、チャーシューは分厚くてトロトロの食感だった。脂が好きであればが、それが値段に反映されているのだろうか。

会計を済ませたとき、お店の人からラーメンの割引券をもらった。その券を使ってやっと相場に近い値段となる。

「テレビに出ていたから」というのは、人々が店へ足を運ぶのに十分な動機になる。が、それが「イイ店」とは限らないことを実感した。あ、その店がテレビでどのように紹介されているのか店の特定につながるのでご勘弁を。