永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

24時間戦えますか?

少し前に「赤まむしドリンク」を製造・販売している日興薬品工業を取材した。

↓公開された記事はコチラをご覧ください。

toyokeizai.net

「赤まむしドリンク」が発売されたのは、1955年から1973年にかけてのこと。いわゆる高度経済成長期。この国がまだ元気だった頃である。

バブル期に入ると、栄養ドリンクの過当競争が激化した。1989年の新語・流行語大賞に選ばれたのは「24時間戦えますか」。これは栄養ドリンク「リゲイン」のキャッチコピーだった。

ところが、2000年代になると、薬事法の改正で効果や効能を明記した医薬部外品が幅を利かせるようになり、清涼飲料水である「赤まむしドリンク」をはじめとする栄養ドリンクはどんどん隅へと追いやられていった。

取材した日興薬品工業の方は2000年の薬事法改正が命運を分けたと分析していたが、理由はそれだけではないと思った。

「24時間戦えますか?」との問いに対する答えが時代とともに変わったのだ。

ひと昔前なら「望むところだ!」とばかりに栄養ドリンクを片手に戦って(仕事をして)いただろう。それをヨシとされていた。

ところが、今はそうじゃない。

「24時間も戦ってはダメ」だし、「24時間も戦わせるのもダメ」というのが答えになるだろう。24時間というのは大げさな表現であるのは間違いないが、今の会社、いや、社会で推奨されるのはノー残業。

つまり、日本社会において栄養ドリンクは必要なくなったのである。

たしかに残業ナシでその分プライベートを充実させるという発想はすばらしいと思う。その反面、定時で終わらせねばならないため、仕事に効率を求められるようになったのではないか。

栄養ドリンクは要らなくなったけど、ストレス解消ドリンクや精神安定ドリンクが必要になったのだ。そんなもん、ないけど。

私はフリーランスだから、忙しいときは12時間、14時間労働なんてフツー。労働基準法も関係ない。その代わり、休みたいときに休む自由もある。だからこそ、栄養ドリンクをグビリと飲んで気合を入れる必要があるのだ。

働けど、働けど、給料が上がらない「失われた30年」を取り戻すには、国の政策が第一である。国民も「24時間戦えますか?」との問いに「望むところだ!」と答える覚悟も必要なのではないか。