永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ラーメンの可能性。

自家製麺と無化調(化学調味料不使用)スープのラーメン店が増えてきた。

化学調味料、いや、今はうま味調味料というのかな、美味しくなるのであれば、使おうが使わまいが私はどちらでもよいと思っていた。

しかし、ラーメンも和食やフレンチ、イタリアンと同じ料理であると考えたとき、うま味調味料は必要なのかという疑問にぶち当たる。

私が知らないだけかもしれないけど、和食やフレンチ、イタリアンでうま味調味料を使っているという話は聞いたことがないし、フレンチやイタリアンにおいては

「ここで醤油を一滴加えれば完成するんだけど、それがやりたくないから面倒くさいことをしている」と話すシェフもいた。

本場フランスのシェフは、醤油や味噌、カレー粉などを躊躇なく使うと聞く。日本人シェフがそうしないのは、フレンチのシェフとしての矜持なのだろう。

ラーメンという食べ物は他の料理と比べて特殊といえば特殊である。うま味調味料を使うことも人々に認知されているし、その一方で無化調にとことんこだわる店もある。

現時点で私もどちらが正解とは言えない。ただ、無化調の方が可能性を秘めていると感じる。

ここ何日か、無化調のラーメンを食べていて、それらに共通しているのは、スープを飲んだときにどこにも引っかからず、スーッと身体に浸透していく感じ。文字で表すとすると、滋味ともいうべきか。

ひと口目のインパクトは弱いものの、一杯を食べ終わる頃になんともいえない満足感に包まれる。やたらと喉が渇くこともない。

また、自家製麺の場合、スープに合わせて麺の種類を変えることもできるため、味のバリエーションが広がる。

店主一人で調理を担当する店が多いため、ラーメンとつけ麺だったり、カエシを変えて醤油と塩だったりと、まだ種類こそ多くはない。

例えば、日本そばのようにニハチと十割、太切りの田舎そばと細切りのそば、温かいそばと冷たいそば、そばがきと種類を増やして、少しずつ多くの種類を楽しめるラーメン店があってもよいと思うのだ。それも客単価3000円くらいで。

ラーメン一杯が1000円超えが当たり前になりつつある今、ラーメン店そのもののあり方(業態)もこれからは多種多様になっていくと思う。

ラーメンを専門に取材をしているわけではない私が言うのもおこがましいが、ラーメンの鬼・佐野実さんは、ラーメンの料理としての地位を和食やフレンチ、イタリアンと同列にしたかったのではないか。

佐野実さんが活躍した90年代から2000年代初頭では叶わなかったことが令和の時代になって現実になりつつある。私はフードライターとしてこれからも注視していきたい。