
あらかじめ言っておくが、私は「いい人」ではない。理不尽なことがあれば腹も立てるし、毒も吐く。とくに仕事で嫌な思いをしたときは、そうさせた者を許すことができない。そこまで人間ができていないのだ。
「心が狭い」とか、「人として小さい」とか、「ハゲ」、「デブ」、「カス」など好き勝手に言えばよい。事実なんだから。
2週間ほど前、取材でお世話になった飲食店を運営する会社の営業部長から電話があった。私も面識があり、たしか最後に取材をしたのがコロナ前の2019年6月頃だったと思う。
2018年にも私はあるwebメディアで店を取材した。そのときに撮影した写真を別の媒体で使わせてほしいという連絡だった。
このようなケースはたまにある。お世話になった店だし、いつもは快諾する。もちろん、その場合でも使用料はきちんといただく。苦労して撮影した1枚だし、それが写真撮影を生業とするということだから。
しかし、連絡をくれた店と私は複雑な関係にあった。あ、店は取材にとても協力的で、悪い印象はこれっぽっちも抱いていない。最後に店を訪ねた2019年から現在まで取材をお願いしたいと思ったことも何度かあった。
実は、その店の公式HPやECサイトを管理・運営する会社の社長、仮にAとしておこう。Aからの依頼で店のブログ記事の執筆を担当することになった。おそらくそれが2018年の年末から。
Aとの出会いはFacebookがきっかけだった。メッセンジャーで
「名古屋の食について話を聞きたい」との連絡を受けて、実際に会ったときにブログ記事の執筆を依頼された。私にとって企業案件はこれが初めてで、ギャラの相場もよくわからず、今思えば格安だった。まぁ、それはどうでもよい。
毎月、店を訪ねてはその時季おすすめのメニューの話を聞き、写真を撮り、記事を書いた。ときには1日がかりで店のメニュー写真を撮影したこともあった。回数を重ねるごとに店の人との関係も生まれるし、その仕事にやりがいも感じていた。
2019年の初夏頃だったと思う。多くの人がその名を知る全国誌で名古屋の食を特集することになり、私にも声がかかった。取材件数が多く、〆切もタイトだったため、過去に取材でお世話になった店を中心に取材リストを作成した。その中にブログ記事を書いている店も加えた。
編集部からゴーサインが出て、店にアポを入れて、指定されたの日に取材・撮影をした。その後は校正のやりとりもして無事に仕事を終えた。それからしばらくしてAから電話があった。明らかにAは怒っていた。
「何で、私を通さずに全国誌の取材をしたんですか!?」と、A。
私の頭の中は???????でいっぱいになった。Aは店の広報担当ではなく、公式HPの管理・運営を任されている出入り業者にすぎず、Aに話を通す義務も義理もない。それに私はAの社員でも部下でもない。私は私の仕事をしたまでであり、Aにそこまで管理される筋合いもない。
これはあくまでも私の推測だが、Aが「店への取材は自分を通せ」と言ったのは、全国紙の取材のオファーを受けたことを自分の手柄にしたかったのだと思う。
実はこれまでにAの発言や態度にブチキレそうになったことが何度かあった。例えば、打ち合わせに行く前に
「先方にはナガヤさんのことを超一流のライターと伝えてありますから、それらしく振る舞ってください」と、A。
私ゃ自分のことを超一流なんて思ってはいないけど、「超一流のライターらしい振る舞い」って何なんだよ!っていうか、Aを前にした私の振る舞いが超一流のライターではないと言っているようなもんだろ、それ。めちゃくちゃ失礼な話ではないか。そんなことが積み重なり、「取材は私を通せ」発言でとうとう私もキレた。とはいえ、私もいい大人なので、
「Aさんから仕事を請けることで自由に取材活動ができないなら辞めさせていただきます」と、いっさいの仕事から手を引くことにした。
だから取材に行きたくても行くことができなかったのだ。別のメディアに写真を提供するとなると、クレジットも載るだろうし、それを見たAがまた面倒くさいことを言ってくるかもしれないと思うと、どうしても二の足を踏んでしまう。
「私はずっと前から店へ取材に行ってませんが、実はAさんとモメまして……」と、営業部長に話すと、そのことをまったく知らない様子だった。
ええ、話しましたとも。洗いざらい全部。めちゃくちゃスッキリした。
「では、私どもの方からAさんにクギを刺しておきましょうか」と、営業部長。いやいやいや、それは余計に面倒くさいことになるため、丁重にお断りした。これまで6年間モヤモヤした気持ちが腫れたこともあって、写真の使用を快諾した。そして、これを機にまた機会があれば取材に伺わせていただきたいと付け加えた。
私が暴露したことでAがどうなろうと知ったこっちゃない。それだけAのやったことは無礼千万なのだ。
と、ここまでアケスケに書いて、万一、Aがこのブログを見たら名誉毀損で訴えられるかもしれないと思った。でも、訴訟リスクを恐れずに事実を書くこと。これが「超一流のライターらしい振る舞い」だと私は思う。