永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

国家権力 VS 肛門括約筋

先週金曜日、刈谷での打ち合わせから名古屋高速で帰る途中、スピード違反で捕まってしまった。

理由は単純。腹が痛かったのである。

知立バイパスから星崎インターへ入ったあたりで、急に腹の様子がおかしくなった。一刻も早くトイレに駆け込みたい。自宅からいちばん近いのは楠インター。そこまで持てば、降りてすぐのコンビニで救われる。

そう信じて走るしかなかった。

ところが途中で何度も何度も腹の中でビッグウェーブが押し寄せる。そのたびに冷や汗をかきながら、私は肛門括約筋を全力で締め上げる。運転というより、ほぼ精神修行である。

ぐるっと環状線を回って楠線へ入り、黒川インターを過ぎた。あとは一直線。もう勝ったも同然である。そう思った瞬間、後方でサイレンが鳴った。

嫌な予感しかしない。

パトカーに先導されて非常駐車帯に停車。「スピード出しすぎ」と言われ、パトカーへ。言われるがまま免許証を提示するが、こっちはそれどころではない。

世間はDXだAIだと言っているのに、交通違反の反則キップはいまだに手書き。この時間が永遠に感じる。私は尻が筋肉痛になりそうなほど括約筋を締め続けていた。

「言い訳にならないのは承知ですが、腹が痛くて……早めにお願いできませんか」

必死の訴えに対し、「急ぎます」と言うものの、動きは実に丁寧だ。こっちは冷や汗から脂汗に進化しているというのに。

ようやく書類が終わり、反則金の説明を受けるが、内容は一切頭に入らない。今の私に必要なのは法律知識ではなくトイレだ。

ふと気になって、おまわりさんに聞いた。同じ状況ならいったいどうするのか。

「法定速度で走って、近くのインターで降りますね」

模範解答だった。正論すぎて反論の余地もない。

幸い捕まった場所は楠インターのすぐ手前。解放された私はコンビニへ飛び込み、人としての尊厳を守ることができた。

腹痛が治まると、ようやく冷静になった。反則金は3万5千円。半日近くの撮影料が吹き飛んだ計算だ。正直、むちゃくちゃ痛い。

こんなことなら、パトカーの中で思いっきり漏らしてやればよかった。その場合、公務執行妨害になるのだろうか。

いや、たぶん別の意味で一生忘れられない違反記録になっていただろう。