永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

たぶん、新たな歴史の現場にいる。

うどん屋やそば屋の中華そばが好きな人も多いと思う。

町中華では中華そばのスープを鶏ガラや豚骨から出汁を取るが、うどん屋やそば屋の多くは、わざわざそこまでしない。出汁とかえしを合わせたうどんのつゆに豚バラ肉を入れてひと煮立ちさせれば、魚介の旨みに動物系の旨味が加わり、おいしい中華そばのスープに変身する。

うどん屋やそば屋の中華そばの魅力は、今どきのラーメンとは違う素朴な味わいにあるのだろう。

昨年、私は『TRYラーメン大賞全国版』の取材・撮影で、愛知県岡崎市の『麺屋あきのそら』を訪れた。ここのウリは、昆布や煮干し、サバ節などを使った和出汁をメインにした無化調スープ。誌面では、「まるや八丁味噌」を使ったラーメン「岡崎八丁みそ」(写真)を取り上げた。

「岡崎八丁みそ」は、和出汁に鶏油とラード、ネギ油を加えている。

「名古屋のうどん店『いなや』さんのみそ中華のインスパイアです」と店主が言う通り、発想はラーメンというより、むしろうどん的である。

一方、先日、岡崎の『つけめん舎一輝』の杉浦正崇さん、名古屋・丸の内の『濃厚中華そば 佐とう』の佐藤昇さんとともに、刈谷のうどん店『きさん』を訪ねた。

その際、「海老天に海老油を加えたら、もっと海老の風味が増すのに、何でうどん屋さんはやらないんだろう」という杉浦さんの何気ないひと言に触発され、『きさん』店主の都築晃さんは、その日のうちに海老油を作って海老天うどんに加えた。すると、杉浦さんの言った通り、海老の風味が格段にアップしたという。

また、昨日は、杉浦さんと名古屋・大久手の山本屋大久手店へ。5代目の青木裕典さんと話しているうちに、

「山本屋の味噌を使って二郎系ラーメンってできないかな。題して、山本二郎(笑)」

と杉浦さん。二郎といえばニンニクと背脂だが、八丁味噌がうまくまとめる気がする。冗談めかしてはいたが、杉浦さんなら本当においしい八丁味噌ラーメンを作ってくれるのではないか、と思ってしまう。

杉浦さん、佐藤さん、都築さん、青木さんのやり取りを横で見ながら、私はひょっとすると歴史的な場面に立ち会っているのではないかと思った。

これまで交わることのなかったラーメン店とうどん店が、互いの知恵と技術を持ち寄れば、新しいラーメンやうどんが生まれるかもしれない。

私は作り手ではない。だが、作り手同士が出会い、言葉を交わし、刺激を受ける場に立ち会い、それを記録することはできる。

もし、その出会いの一瞬をつなぐ役割を果たせているのだとしたら。食文化の小さなうねりのそばに立てているのだとしたら。フードライターという仕事も、悪くない。

これからも私は、彼らの動きを追い続け、その熱を言葉にしていこうと思う。