永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

チャーラーの旅。57

愛媛県松山市への出張で、ずっと訪れたいと思っていた店へ行ってきた。
愛媛名物の鯛めしでもなければ、鍋焼きうどんや焼豚玉子飯でもない。チャーラー、すなわちチャーハンとラーメンのセットである。

その店の最寄り駅は伊予鉄高浜線・山西駅。そこから徒歩で約12〜13分。交通の便がよい場所とはいえない。今回は車移動だったので、松山市中心部からカーナビを頼りに向かった。所要時間は20分ほど。

私が興味をそそられたのは、『やきめし 潮路郎(しおじろう)』という店名。中国料理でもラーメンでもなく、やきめし。店名からやきめしに対する自信と誇りが伝わってきて、これは絶対に食べねばならないと思ったのだ。

店に到着したのは昼のピークを過ぎた午後1時すぎ。店の隣には松山市内でも屈指の人気を誇るラーメン店があり、店の前には席待ちの客が並んでいた。それには目もくれず『やきめし 潮路郎』へ入った。

店内では奥の方で、常連客と思われる70代くらいのお父さんたちがビール片手に宴を開いていた。話の内容から、どうやら幼馴染み同士らしい。昼下がりのチャーラーに相応しいBGMである。

案内されたカウンター席では、若者がやきめしを頬張っていた。かなりの量で、大盛かと思ったが、店内の貼り紙にチャーハンの量について説明があった。

「並盛」(800円)は約450グラムで、他店なら大盛クラスのボリューム。「大盛」(950円)は約600グラム。これは完食が難しそうだ。「小盛」(600円)は約250グラム、「特小」(400円)は約150グラム。さて、どれにするか。

ラーメンは「中華そば」(750円)の一択。店名に冠する「やきめし」が今回の主役であり、小盛や特小ではサブ扱いになりかねない。とはいえ、「中華そば」1杯に450グラムの並盛はさすがに多い。結局、「やきめし」は小盛を注文した。

まず運ばれてきたのは「中華そば」。思っていたのとかなり違う。山盛りのキャベツ、モヤシ、ネギを見て、「やきめし」を並盛にしなくて正解だったと胸を撫で下ろした。具材はほかに豚肉とちくわも入っている。

スープをひと口飲んで、さらに驚いた。チャンポンやタンメンのような味を想像していたが、まったく違う。甘いのだ。野菜の自然な甘みというレベルを超えた、はっきりとした甘さ。こんな中華そばは初めてだが、不思議とクセになる味わいだった。

時間差で「やきめし」小盛が到着。米一粒一粒に均一に火が通り、中華鍋を振る技術の高さがうかがえる。カコン、カコンと店内に響くリズミカルな調理音を聞いていたので、食べる前からハズレはないと確信していた。

予想通り、食感はパラパラとしっとりの中間という理想形。味付けは塩ベースだが加減が絶妙で、スプーンを持つ手が止まらない。その合間に甘いラーメンスープを飲むと口の中がリセットされ、またやきめしに手が伸びる。きっとこの甘い「中華そば」は、やきめしとの相性を計算した味なのだろう。

やきめしと中華そばを交互に食べていると、先ほど料理を運んでいた店員さんが横で賄いのやきめしを食べ始めた。卓上には粉末ガーリック、カレー粉、白コショウ、粗挽きコショウ、七味唐辛子、ソースが並び、味変し放題。私も真似して白コショウやソースを試してみたところ、これが実にうまい。やきめし自体がシンプルだからこそ、調味料で表情が大きく変わる。

いやー、おいしかった。チャーラーの奥深さを、またひとつ思い知らされた。