永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

リメンバー!なごやめし・3

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河村たかし名古屋市長宛に要望書を提出してから、新メンバーもくわわり、私たちは「なごやめしの日」制定委員会と名乗って活動することにした。まずは飲食店を営む方に「なごやめしの日」制定の意義や私たちの思いを伝えようと、知り合いを中心に声をかけて集まっていただいた。ところが、私たちの準備不足が原因で、意義や思いよりも方法論が先行してしまった。そのため、巷にある既存の町おこしイベントと混同される方もいて、言い出しっぺである私自身が「なごやめしの日」の奥にある理念に立ち返らねばと痛感した。

また、ほぼ同時進行で「なごやめし」とは何か?についても議論を進めなければならなかった。このブログにも書いた「なごやめし」の定義はその頃に話し合ったことがベースとなっている。そのなかで、あらためて気が付いたのは、店と客との距離の近さだった。とはいえ、現在、個人経営の店であっても、ファストフードやファミレスの、極端な言い方をすれば「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」だけの画一的なサービスになっているのではないかと思ったのだ。

個人経営の店の魅力は客がお金を払い、店が商品を提供するだけではない、昔からの友人のような、ときには家族のような、何ともいえない心地よさであると私は思う。ジャンルこそ違うが、私自身、20代のときに通い詰めていたラーメン屋さんがあった。当時、自衛隊員の友人とよく遊んでいて、たまたま入った店だった。

店主は気さくに話しかけてくれて、友人が自衛隊員であると話すと大変喜んだ。店主は元自衛隊員で、「後輩から金をとるわけにはいかない」と、その日の飲み食いはタダにしてくれた。その後、私は常連となり、仕事のことやプライベートなことも相談できる関係になった。もちろん、タダになったのは最初の1回だけで後はきちんとお金を払っている。今の若い人はそういう自分だけの、お気に入りの店はあるのだろうか。「なごやめしの日」はそれを見つけるきっかけにもなると思った。

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私たちは何度も議論を重ねるなかで、「なごやめしの日」制定委員会から「なごやめし8(エイト)どえりゃこむ」という名称に変更した。これから参加店を募集するにあたって、堅苦しいものではなく、親しみやすさを第一に考えてのことだった。

そして、参加店には「うみゃぁで なごやめしの店」と書かれたプレートと毎月8日に店内に取り組み内容を掲示するPOP用紙を配布して、参加店に掲げてもらうことにした。プレートには通しナンバーが記されていて、抽選会を開いて決めようということになった。さらに、公式HPも作成し、店の情報と8日の取り組みを発信することにした。ちなみに会費は「なごやめし8(エイト)」にちなんで8000円。巷のグルメ情報サイトに比べれば破格の値段だが、個人経営の店がどれだけ参加してくれるのかはまったく読めなかった。

私は雑誌の取材で訪れる店には原則として撮影のために用意してくれたメニューの代金を支払っていた。「要らない」と言われても半ば無理矢理に受け取ってもらったこともある。それほど貸し借りの関係を作るのが嫌だった。店と私はどこまでも対等でなければならないのだ。だから、私自身、店からお金をいただくことにかなり抵抗があり、なかなか積極的に参加を勧められなかった。

ところが、「なごやめし8(エイト)どえりゃこむ」の取り組みや私の思いをFacebookに書き綴っていると、友人として繋がっている飲食店経営者から参加したいというメッセージやコメントをいただいた。それも2人や3人ではなく、最終的には30人近くの方から申し込みがあり、涙が出るほど嬉しかった。20年以上もずっと1人で仕事をしてきて、初めて報われたような気がした。(つづく)