永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

リメンバー!なごやめし・2

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「なごやめしを食べながら名古屋の街づくりについて考える会」とは、毎回設けるまちづくりに関するテーマに対して、「なごやめし」を食べながら年齢や性別、肩書きを超えて語り合う集まりである。いちばんの目玉は、河村たかし名古屋市長が臨席し、市民の意見に耳を傾けてくれるところだ。河村市長はいつも

「意見は要望書としてまとめて出しゃぁいい。要望書が出ると、議会で話し合わんといかんでよ」と話していたので、回を重ねるなかで私たちが考えたことを要望書として提出しようということになった。その頃、若い世代の「なごやめし」離れについて、多くの店主から話を聞いていたこともあり、私はいかにすればそれを食い止めることができるかを考えた。

若者向けのイベントを開催するにもお金や時間だけでなく、人員も必要となる。夫婦や家族で営んでいる店は、休んでまでイベントに参加できない。それに『なごやめし博覧会』『NAGO-1グランプリ』などの町おこしイベントはすでにある。スポンサーもない私たちが参入するにはハードルが高すぎる。

では、個人経営の店を中心としたグルメガイドブックやwebを制作するのはどうか。私がボランティアで取材や撮影を行ったとしても、デザインや印刷にお金がかかる。第一、それらを手に取るなり、スマホやPCで見てもらわなければならない。どのようなプロモーションをかけるのかが課題となる。

やはり、資金力のある企業や商工会議所でなければ、町おこしは無理なのか…。諦めかけたその時、1つのアイデアが浮かんだ。名古屋市の市章である「マル八」にちなんで、毎月8日を「なごやめしの日」として制定し、その日に飲食店へ足を運ぶと、何かしらのトクをするというもの。

毎月8日を「なごやめし」を食べることで郷土の食文化に思いを寄せる機会とするのだ。さらに、個人経営のみならず、小学校の給食や大学の学食などでも実施されれば、希薄といわれる名古屋人の愛郷心も育まれるのではないかと。

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「なごやめしを食べながら名古屋の街づくりについて考える会」の運営メンバーに話すと、すぐにそのアイデアを「要望書」としてまとめることとなった。そして私たちはそれを河村市長に手渡すために名古屋市役所を訪ねた。

事前に市政記者クラブにプレスリリースを流していたこともあって、訪問当日は新聞記者やテレビ局の取材クルーが大勢集まっていた。この「なごやめしの日」のアイデアは、メディアが必ず興味を持つと私は思っていたが、ここまで注目されるのは意外、というか嬉しい誤算だった。

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秘書の方に市長室へ案内され、河村市長と対面。「なごやめしを食べながら名古屋の街づくりについて考える会」で何度もお目にかかっているし、私自身も数え切れないほど取材や撮影をしているが、こういう形で再会すると緊張してしまう。それはほかのメンバーも同じだったようで、それぞれがたどたどしく「なごやめしの日」や名古屋の将来について思いの丈を語った。河村市長は「要望書」を受け取り、議会で検討することを約束してくれた。

市長室を出ると、待ち構えていた新聞記者やテレビ局の取材クルーから質問攻めにあった。とくに私たちのグループの代表は多くのカメラに取り囲まれて、ワイドショーで見かけるような絵になっていた。この時点ではまだ「なごやめしの日」はアイデアでしかなく、実体がなかった。囲み取材を受ける代表を見ながら、私はこれをどのように広めようかと考えていた。(つづく)