永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

サヨナラ、名古屋めし。

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お気づきになられた方もいると思うが、ブログのタイトルを『永谷正樹のなごやめし生活』から、『永谷正樹、という仕事。』に変えた。

昨日のブログで、もうそろそろ「名古屋めし」というコトバを使わないようにしませんか?と呼びかけた手前、ブログタイトルが「なごやめし」では説得力がないと思ったからである。

名古屋めしについて書いていたのは、2016年〜2017年頃。それ以降はほとんど書いていない。ググって名古屋めしの食レポを期待してこのブログに来られた方には本当に申し訳ないと思っている。

『永谷正樹の名古屋めし生活』というタイトルにしたのは理由がある。ブログを開設した2016年当時、名古屋めしについての講演のオファーが多く、取材して得た知識をまとめてレジュメ代わりにしようと思ったのだ。

それと、イヤラシイ話、タイトルを「なごやめし」とすればアクセス数も増えると思った。ブログのURLもはてなのIDも“nagoya-meshi”とした。あー、本当にイヤラシイ。

「名古屋めし」というコトバを使わない、と書くと勘違いされるかもしれない。ナガヤの名古屋めし愛が冷めたのではないか、と。

まったく逆である。名古屋めしというコトバが生まれたからこそ、一介の地方ライターにすぎない私が『なごやめし』という単行本も出版することができたし、30代から現在にいたるまで何とか食べていけるのも名古屋めしのおかげである。

では、なぜ、名古屋めしというコトバを使いたくないのか。私は名古屋の食文化の奥深さを語りたいのだ。名古屋めしとひと括りにしてしまっては、味噌かつやきしめんなどそれぞれの魅力が伝わりにくい。そう判断したのである。

例えるならば、アイドルグループだ。メンバー一人一人の発信力が弱くても、集まることで大きな力となる。私は名古屋めしというグループを追いかけるよりも、ソロの味噌かつやきしめんを取材したい。

時代とともに人々も食に対して本物志向になっている。グループで活動するよりもソロでそれぞれの実力を発揮する時期に来ていると思う。ソロアーティストと呼ぶに相応しいきしめんはどの店が出しているのか。フードライターとしてはその方が面白いに決まっている。

それともう一つ理由がある。先日、ある店へ取材に行ったとき、ご主人からこんな話を聞いた。

「名古屋の料理人は、味噌やたまり醤油に頼っている、って言われたことがあります。東京や大阪からそんな風に見えるんでしょうかね」と。

それは偏見そのものである。たしかに名古屋の調味料は個性的だが、それらを使いこなすことで食材そのものの旨みを引き出しているのである。料理人がナメられているということは、彼らの作る料理も格下と言っているのと同じことだ。それは断じて許せない。

そんな間違ったイメージをオノレの人生を懸けてでも払拭したい。そのためには、やはり、名古屋めしというコトバは要らないのだ。だから別れを告げようと思う。

サヨナラ、名古屋めし。