永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

居酒屋チェーン『素材屋』の新なごやめし「台湾まぜそば鉄板焼き」

フードライターとして仕事をするようになった'02年頃から、大手のファミレスや回転寿司で食事をすることが少なくなった。個人経営の店を応援したいと思っているし、あわよくば取材のネタになるかもしれないというイヤラシイ気持ちもある。

あ、セルフうどんチェーンの『どんどん庵』や県内に店舗展開する『長命うどん』は別だ。これらの店にはきしめんの消費量を増やすために行く。また、あまり見かけないチェーン店や大手の新業態なども興味半分で入ることもある。

そんなわけで15年ほど大手チェーンから足が遠のいているのだが、少し前に名古屋に本社があり、しゃぶしゃぶが有名な『木曽路』が手がける居酒屋チェーンの『素材屋』へ行った。『素材屋』は名古屋以外に東京にも店があるので、ご存じの方も多いだろう。

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私の仕事の屋号は『取材屋』ということもあり、何となく親しみが持てる(笑)。実は名刺に使っている『取材屋』のロゴのデザインは、『素材屋』が昔使っていたものをパクり、いや、参考にさせていただいた(笑)。

入り口や店内に「なごやめし」をPRするPOPがないところが好感を持てた。グランドメニューにも、ごくフツーに、当たり前のように「味噌串カツ」や「味噌どて煮」、「手羽先の唐揚げ」が載っている。東京のお客さんは、メニューを見て初めてここが名古屋の居酒屋チェーンであることを知るのだろう。

私がここに訪れた目的は、台湾まぜそばをアレンジした「台湾まぜそば鉄板焼き」がメインの「名古屋めしコース」を食べるため。「新なごやめし」と呼ばれる台湾まぜそばがすでにアレンジされていることに驚き、自分の舌でどうしても確かめたくなったのである。

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これが台湾まぜそば鉄板焼き。台湾ミンチ(?)の上にのせられた卵黄やドサッと盛られたニラはまさしく台湾まぜそば。豚バラ肉やニンジン、中には麺とたっぷりのモヤシが入っている。

ちなみに台湾ミンチには豆味噌を使い、より名古屋らしい味に仕上がっている。味のベースとなるタレは、唐辛子味噌の辣醤(ラージャン)に和風ダシなどを合わせた自家製。写真のように湯気が立って、豚バラ肉に火が通ってきた頃が食べ頃。

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台湾まぜそばのように、よくかき混ぜて食す。そのまま食べても十分旨いが、別添えの生卵を溶いてすき焼きのようにくぐらせて食べても旨い。辣醤とニンニクのパンチのきいた味が溶き卵を絡めることでマイルドになり、いくらでも食べられる。もちろん、ビールや酎ハイとの相性も抜群だ。台湾まぜそばのように〆の「追い飯」がほしいところだが、酒のアテなので仕方がない。

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「名古屋めしコース」は、台湾まぜそば鉄板焼き以外にサーモン刺身や海老マヨサラダ、どて玉子、手羽先の唐揚げ、味噌串カツ、海老天むす、小倉トーストが付く(現在は少し内容が替わっている)。これら全8品に飲み放題が付いて3500円!チェーン店だからこそ、この安さとボリュームを実現させたのだろう。

150グラムものモモ肉を贅沢に使った「純系名古屋コーチンのひつまぶし」

これまで2日間にわたって、とんかつ(豚)と飛騨牛のひつまぶしを紹介してきたが、今日は鶏、それも名古屋コーチンを使ったひつまぶしを紹介しよう。

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写真は、栄2丁目にある『焼鳥 とりっぱ 伏見店』の「純系名古屋コーチンのひつまぶし」。店は純系名古屋コーチン岐阜県産の鶏肉を使った焼鳥の専門店。この「純系名古屋コーチンのひつまぶし」は、お酒の〆やランチで絶大な人気を誇る。

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贅沢に150グラムものコーチンのモモ肉を使用。炭火で焼き上げた後、鰻のひつまぶしのように細かく刻み、ご飯にのせてある。噛むごとに広がる濃厚な肉の味もさることながら、驚いたのは脂の繊細な旨み。飛騨牛の脂のように、口の中でサッと溶けていくのだ。これが名古屋コーチンの醍醐味だろうと思った。

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さらに、薬味のネギやワサビとともに食べると、別物になったかのようにさっぱりとした味わいになる。〆のお茶漬けもとても美味しかった。「かつまぶし」にはじまり、「飛騨牛ひつまぶし」もそうだったように、この「純系名古屋コーチンのひつまぶし」でも薬味をのせた2杯目がいちばん美味しかった。

逆にひつまぶしに使えるような食材のなかでワサビやネギ、だし汁と合わないものはないだろうと思った。ここに「なごやめし」にとって重要なポイントである汎用性の高さを感じざるを得ない。ひょっとすると、今後「ひつまぶし」という名称は、鰻に限ったものではなく、薬味やだし汁を使って味の変化を楽しめる、お櫃に入った料理の総称になるかもしれない。

これからも新しいタイプのひつまぶしを探し、レポートしてみようと思っている。

圧巻の旨さ!飛騨牛ひつまぶし

旨い鰻か高級な飛騨牛、食べるならどっち?鰻はもともと安くはなかったが、少し気合いを入れれば何とか手が届いた。しかし、ここ数年間でどんどん値上がりし、ひつまぶしは焼肉や寿司と並ぶ高級グルメになってしまった。では、こんなメニューはいかがだろう?

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丸の内2丁目にある『舎人庵 とんぼ』の「飛騨牛ひつまぶし」である。こちらは岐阜県飛騨市古川町の契約牧場から直送されるA4~A5等級の飛騨牛の炭火ステーキや朴葉味噌焼きなどが楽しめる飛騨牛料理専門店。「飛騨牛ひつまぶし」は、絶妙な火加減で焼き上げたロース肉をご飯の上に敷き詰めた店の名物である。

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タレはこのメニューのために作り上げたオリジナル。醤油のコクが飛騨牛の濃厚な旨みを引き立てて、繊細な脂の口どけとともに芳醇な香りが鼻から抜ける。この旨すぎるタレは何なんだ!?店主に聞いてみると、イタリアンのシェフからのアドバイスで隠し味にバルサミコ酢を使っているという。

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食べ方はひつまぶしと同じ。1杯目はそのまま。2杯目は薬味のネギとワサビ、刻み海苔をのせて。3杯目は熱々のダシでお茶漬けに。私が気に入ったのは、2杯目。飛騨牛のとろけるような脂がワサビの刺激と相まってめちゃくちゃ旨いのだ。できることなら特大のドンブリでかっ喰らいたい(笑)。

アメリカ産やオーストラリア産のステーキ用の肉を買ってきて、和風の焼肉のタレで味付けしてご飯にのせれば、まったく同じ味とまではいかないにしても、似たようなものが家でも作れると思うだろう。しかし、肉そのものがまーったく違うのだ。最高級の飛騨牛だからこそ、この味が出せるのである。

ちなみに「飛騨牛ひつまぶし」の値段は、いちばんベーシックなもので3300円(税込3564円※店のHPより)。ひつまぶしとカブる値段である。さて、食べるならどっち?

イイ意味で期待を裏切られた「かつまぶし」

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写真は一宮市にある『とんかつ たる蔵』の「かつまぶし」である。その名の通り、とんかつをひつまぶしのように薬味とだし汁で食すメニューだ。ネットでこれを見つけたとき、正直、「これはない」と思った。いくら、ひつまぶし人気にあやかりたいとはいえ、これは強引すぎると思ったのだ(笑)。しかし、実際に食べてみると、見事に予想を裏切られた。

見た目からかつに使っているのはヒレだと分かったものの、かつにかかっているのはソースなのか?醤油なのか?それとも、ひつまぶしを意識して鰻のタレかもしれない。味がまったく想像できなかったが、答えは醤油ベースの自家製タレだった。これがヒレかつとご飯とを一体化させるコネクタの役割を果たしていて、めちゃくちゃ旨い!このタレに行き着くまでかなり苦労したそうだ。

「とんかつソースや鰻のタレ、だし醤油などいろいろと試しました。ご飯と合わせたり、お茶漬けにしたりすると、どうしてもバランスが悪くなってしまうんです。試行錯誤を重ねて作りました。詳しくは言えませんが、鰻のタレも入っています」と、オーナーの伏屋文克さん。

薬味はひつまぶしにも用いられる刻み海苔とワサビ、そして、塩昆布。これも本当によく考えられていると感心した。ヒレかつに昆布の旨みがくわわると旨みが倍増するのだ。もう、例えようのない旨さ!思わず、貪り食ってしまった。

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さらに驚いたのが、だし汁。通常、ひつまぶしは鰹だしを使うが、ここでは昆布茶。これもめちゃくちゃ合う!旨いのはもちろんだが、昆布茶であれば、いちいちだしをとる手間が省けるので、店側のオペレーションも楽になるというメリットがある。

この「かつまぶし」は、2000(平成12)年に系列店の『かつ秀 各務原店』で、巷のとんかつ店にはないオリジナルメニューとして考案されたという。当初は期間限定メニューだったが、人気が出たためグランドメニューにくわえられたのだ。

一部の店の名物だったひつまぶしが巷の鰻屋でも食べられるようになり、「なごやめし」を代表するメニューとなったように、この「かつまぶし」もその可能性は十分にあると私は思う。

「新なごやめし」とは何か

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前にも書いたが、私の幼い頃は町の鰻屋さんにひつまぶしは置いていなかった。ひつまぶしそのものは『あつた蓬莱軒』や『いば昇』で出されていたと思う。ひつまぶしは、それらの店の常連が食べていた知る人ぞ知るメニューだったのである。

水産業界紙の記者に聞いてみたところ、ひつまぶしが町の鰻屋さんでも食べられるようになったのは、愛知万博が開幕する少し前だという。つまり、一部の店の名物だったひつまぶしが「なごやめし」の知名度アップと平行する形でメジャーになっていったのだ。伝統ある料理に思われがちなひつまぶしが人々に知れ渡ったのは、たった15年前のこと。驚くべきスピードで広まったのは、テレビや雑誌といった既存のメディアのほかインターネットの急速な普及も後押しとなった。

ひと昔前までは東京で流行っていたものが名古屋を飛び越えて大阪でもブームとなり、かなり遅れて名古屋へとやってきた。しかも、名古屋にたどり着く頃には、伝言ゲームの後半部分のように少し違う形に「進化」していた。当の名古屋人もブームの大元をよく知らないので(笑)、それが東京で流行っていると信じて疑わなかった。

一例を挙げると、バブル期を象徴する(実際はバブル崩壊後)ジュリアナブームである。『ジュリアナ東京』では、名物「お立ち台」でワンレン&ボディコン姿の女性が“ジュリ扇”と呼ばれる羽根付きの扇子を振り回しながら踊っていた。そのブームが少し遅れて名古屋にも到来したのだが、伏見の『キング&クイーン』や女子大の『マハラジャ』などディスコの「お立ち台」ではワンレン&ボディコンどころか、パンツも丸出し、勢いでトップレスになる女性もまでいた。

このように東京のブームとは少し違う形に「進化」していたのだ。それが東京の編集部から見たら面白いらしく、当時、駆け出しのカメラマンだった私は夜な夜なディスコに繰り出してお立ち台の女性にレンズを向けた。しかし、今はインターネットで東京どころか世界的なブームの情報を瞬時に入手することができるので、タイムラグはほとんどない。

ずいぶんと前置きが長くなったが、ここからが本題。既存の「なごやめし」に独自のアレンジをくわえた「新なごやめし」について考えてみようと思う。ひつまぶしに限らず、台湾ラーメンあんかけスパ、イタリアンスパなども、もともと店の看板メニューだったわけである。それが地元の人々から高く評価され、真似をする店が増えていき、名古屋のローカルフードとなった。

これらのムーブメントは昭和の、古き良き時代のみに起こったわけではない。「なごやめし」は昔ながらの懐かしい味を楽しむものでもあるが、それがすべてではない。

「バターや生クリームをふんだんに使ったクラシックスタイルこそがフランス料理だ!」と主張する人はよほど了見の狭い人だろう。現代のフランス料理は、醤油や抹茶、カレー粉なども遠慮なく使うのだから。つまり、食文化は時代とともに変化するのだ。

私たちの記憶に新しいのは、台湾まぜそばだろう。台湾まぜそばを生み出した『麺屋はなび』の新山直人社長は、「新なごやめし」というキャッチフレーズを用いていた。台湾まぜそばも地元の人々に高く評価され、他店もこぞって真似をした。もはや台湾まぜそばは「新なごやめし」ではなく、「なごやめし」であると私は思っている。

私は講談社のグルメ情報誌『おとなの週末』で'14年11月から'15年7・8合併号まで「おと週認定“新名古屋めし”」という連載ページを担当した。誌面では従来の「なごやめし」に独自のアレンジをくわえて進化させた料理を「新なごやめし」と定義していた。私は書き手として、誌面で紹介した「新なごやめし」がもっとメジャーとなり、何十年後かに「なごやめし」として定着することを願っていた。今後はこのブログでも「新なごやめし」を紹介していこうと思う。

※写真は、名店『うな富士』で料理長を務めた店主が東区徳川町に開店させた『炭火焼き鰻 清月』の「ひつまぶし」。特筆すべきは甘さと辛さが絶妙な『うな富士』譲りのタレ。備長炭で香ばしく焼き上げた鰻の旨みをが引き出している。

ローマ×名古屋のコラボメニュー⁉︎パスタ・デ・ココのカルボエッグ

先日、東京から来たフリーの編集者と一緒に仕事をした。とんぼ返りで東京へ帰るというので、KITTE名古屋の『ヨコイ』のあんかけスパと、名古屋駅構内のうまいもん通りの『味仙』の台湾ラーメンを勧めた。

「辛いものは好きなんですけど、激辛はちょっと…。あんかけスパも食べたことがないので『ヨコイ』へ行ってきます」と、言って取材先近くの駅で別れた。

そういえば、私も年が明けてからあんかけスパを食べていない。正月明け、無性に食べたいという衝動に駆られたが、〆切前の原稿の執筆作業に追われて行けずじまいになっていた。不思議なもので、一度あんかけスパが食べたいと思うと、頭から離れない。前回は忙しさもあって何とか抑えることができたが、どうやら今回は不可能なようだ。

とはいえ、名古屋市内にある『ヨコイ』や『そーれ』まで行く時間はない。以前に紹介した小牧市の『めりけん堂 小牧店』も遠い。ってことで選んだのは、カレーのココイチが運営するあんかけスパ専門店『パスタ・デ・ココ』豊山店。私の自宅からいちばん近いあんかけスパの店だ。

あんかけスパココイチのカレーと同様に、トッピングと量を選ぶシステム。ゆえに、カレーと共通のトッピングもあるし、調理から提供するまでのオペレーションも似ている。だからこそ参入したのだろうが、苦戦を強いられているように見える。カレーでは全国制覇を成し遂げたものの、店舗は愛知と岐阜に集中していて、東京には港区西新橋烏森通店の1店舗のみ('07年1月23日現在)。やはり、あんかけスパは名古屋以外では受け入れられないのだろうかと思ってしまう。

『パスタ・デ・ココ』はあんかけスパ専門店としては後発組なので、『ヨコイ』や『そーれ』などの老舗店では出さないような、ある意味実験的なメニューが揃う。ミラカンやピカタなどの定番メニューの実力は、長くやっている老舗店の方が圧倒的に上。新規参入した店は、定番にこだわるよりもどんどん新しいメニューを出し、そのなかからオリジナルのヒット商品を生み出す方が賢明だろう。

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さて、私が注文したのは「カルボエッグ」(↑写真)。そう、ローマ発祥のカルボナーラと名古屋発祥のあんかけスパとのコラボメニューである。イタリア人が見たら卒倒するかもしれない(笑)。そもそも、これがカルボナーラなのか?という疑問もあるが、それは胸の内にそっとしまっておくとして(笑)、味のレポートをさせていただこう。

結論から言えば、旨かった。もともと卵とあんかけスパとの相性は良いから、まったく不安はなかった。とくにトロトロの卵とのマッチングは最高で、あんかけソースがかなりマイルドになる。と、いうよりはまったく別物になると言ってもよい。コショウの辛さが苦手な人にはかなりオススメできるひと皿だ。

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実はカルボナーラあんかけスパのコラボメニューを食べたのは初めてではない。仕事で西尾市一色町へ行ったときに、ふらりと入った喫茶店でそのメニューがあり、興味半分で注文したのだ。『稲忠珈琲庵』の「カルボナーラ」(↑写真)がそれ。

専門店と違って、麺は太麺ではない。が、茹で上げのようで、食感はアルデンテだった。着目すべきはカルボナーラ部分である。見ての通り、かなり本格派。試しにこれだけ食べてみたが、パスタ専門店で出しても十分通用するクオリティだった。もちろん、あんかけソースを絡めても十分に美味しかった。

何もあんかけソースをかけなくても…と思う方もいるだろう。実際、私もそう思った(笑)。しかし、すぐにその考えを振り払った。これはあくまでもあんかけスパカルボナーラ版なのだ。まず、あんかけソースありき、なのである。こんなメニューが生まれるのも、あんかけソースが何にでも合う、いわば万能ソースだからであろう。

ガテン系御用達の(?)なごやめし、皿台湾

昼に台湾まぜそばを食べると、夜に仕事から帰ってきた女房がしかめっ面で「お昼、ナニを食べたの!?」と必ず言う。どうやらニンニク臭いらしい。注文時に「ニンニク抜きで」と告げても台湾ミンチに入っているのだろう。そのため、女性は敬遠するかというとそうではない。

店へ行くと、女性のグループもいるし、女性のお一人様も見たことがある。私は女房を一度だけ『らーめん まぜそば てっぺん』へ連れて行ったことがあり、女房は「これは好きかも♡」と言っていた。台湾ラーメンも『味仙』などの有名店では女性客を見かける。ニンニクのパンチがきいたピリ辛味は性別を問わず人気なのだ。

余談だが、昔はあんかけスパの店はおっさんだらけだった。今は男女比が半々か日によっては女性の方が多いときすらあるという。この状況にいちばん驚いていたのは、何を隠そう、お店の人だった(笑)。

これは完全に私の偏見だが、台湾ラーメンは現場で汗を流すガテン系の男たちに似合う。昼に台湾ラーメンをかっ喰らい、午後からの仕事のためにスタミナをチャージするのだ。それを思い知らされた店が中川区八剱町の『人生餃子』だった。ここは以前に紹介した台湾ラーメンの有名店『江楽』で修業した店主が'07年に開店させた。名店仕込みの台湾ラーメンが人気なのは言うまでもないが、ここの看板メニューは汁無しの台湾ラーメン。とはいっても、台湾まぜそばではない。

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その名も「皿台湾」。ご覧の通り、茹で上げた麺の上に炒めたモヤシやニラ、ミンチなど台湾ラーメンの具材がのせてある。もう、このビジュアルだけでヤラレてしまう人も多いのではないだろうか。

肝心な味だが、シャキシャキとしたモヤシの食感とパンチのきいたニンニクの風味、醤油ダレの香ばしさが後を引く。麺は焼きそば用ではななく、台湾ラーメンと同じものを使用。ややかために茹でてあり、具材とともに食べたときの食感が絶妙。ピリ辛の味付けなので、ご飯の上にのせて食べたくなるほど白メシとの相性は抜群だが、夏場はビールを片手に楽しみたい。

このメニュー、もともとは店の賄いだったそうで、常連客から人気が広がった。その勢いは凄まじく、寿がきや食品から商品化もされていて、私も何度か買って家で作ったことがある。かなりリアルに再現されているものの、やはり店で食べた方が旨い。まぁ、実店舗と比較されるのがこのテのチルド食品の宿命でもあるのだが。

私が食べに行ったとき、店内は全員男性だった。その多くは頭にタオルを巻いた作業服姿のガテン系。皆、汗だくになりながら一心不乱に皿台湾や台湾ラーメンをすすっていた。それがやたらと「絵」になっていたのである。

台湾まぜそばが女性に支持される理由として、味以外にそのビジュアルも挙げられる。丼の真ん中に盛られた台湾ミンチの上にちょこんと卵の黄身がのり、ネギやニラ、海苔などが美しく盛り付けられていて、思わず、スマホで写真が撮りたくなる。で、インスタなどSNSにアップする。それが台湾まぜそばなのだ。

一方、皿台湾はどうか。茹で上げた麺に強火でチャチャッと炒めた具材がどさっと盛られているだけ。無骨なのだ。目の前に運ばれたとき、スマホで写真を撮るよりも一刻も早く胃袋に沈めたいという衝動に駆られる。無骨ながらもダイレクトに食べたいという欲望に訴えかけるのだ。これを男メシと言わずして何と言おう。