永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

正樹永谷のすべらない話。

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高校時代の話。

ある日、友人のA藤から、学校の帰りに薬局へ寄りたいからつき合ってほしいといわれた。

当時、A藤は犬を飼っていた。散歩をしていても、途中で息が上がってしまい、倒れてしまうほど年老いていた。

その犬が便秘でもう何日もウ○コが出ていなくて、薬局に行ったのは浣腸を買うためだった。今のように動物病院がそこら中にあったわけではないし、命に関わるような病気ではなく、便秘。ウ○コさえ出ればよいと考えて浣腸を買うことにしたのだ。

私たちが訪れたのは、駅前に昔からある小さな薬局。ところが、浣腸を求めて店内を探すも見つからない。仕方がないのでA藤は店員さんを呼んだ。20代半ばくらいの若くて爽やかなイケメンだったことを覚えている。

「あ、あのぅ……。浣腸が欲しいんですけど……」と、A藤。買うモノがモノだけに、さすがに恥ずかしそうだった。

「はい!ありますよっ♪」と、イケメン店員はどこまでも爽やか。こちらが恥ずかしがっていることが馬鹿らしくなるくらいの神対応だった。しかし、その後、イケメン店員から信じられないひと言が放たれた。

「大人用と子供用とありますが、どちらがよろしいでしょうか?」

困惑するA藤。そもそも浣腸されるのは犬だ。大人用とか子供用とか言われてもわからない。困った挙げ句、

「あ、あの、飼っている犬が便秘で……。犬に……スルんです」と、やむにやまれない事情を打ち明けた。

「そのワンちゃんはどれくらいの大きさですか?」と、イケメン店員。まったく表情をかえることなく、クールに聞いてきたので、A藤は両手を広げて、犬の大きさを伝えた。

「その大きさでしたら……子供用で大丈夫だと思います。代金は○○○円になります」と、子供用の浣腸を袋に入れた。

何なんだ?このやりとりは(笑)。私なら爆笑必至なのに、店員さん、アンタはスゴイよ!プロとは彼のような人のことを言うのだと思った。

A藤は財布からお金を取り出すと、イケメン店員は金額をレジに打ち込んだ。ピッ、ピッとキーを打つ音が聞こえたと思ったら、私たちの視界からイケメン店員が突然消えた。

よく見ると、レジカウンターの下に座り込んでいた。しかも、小刻みに肩が震えている。もう、どうにもこうにも堪らず、笑っていたのだ。そんな姿を目の当たりにした私たちも堰を切ったかのように大爆笑。声を出さずに控えめに笑っていたイケメン店員も大爆笑。店内は大爆笑に包まれた。

今でも、思い出すと笑える。

人は年をとるとともに、笑ったり、泣いたり、喜んだりと感情を露わにすることがなくなる。世間的にもそれをヨシとしないのは、周りの人への配慮だったり、恥ずかしさだったり、ガマンすることが美徳とされていたりするからだろう。でも、ときには思いっきり笑ったり、泣いたりした方が身体にも心にもよいのは間違いない。

私は感情こそがモノを創り上げる原動力であると考えている。とくに、笑うことは生き方さえも変える力を持っていると思う。

みんな、笑おうぜ。